タイで進む3つの高速鉄道計画が前途多難だ。中国の協力で始まったバンコクと東北部ノーンカーイを結ぶタイ中高速鉄道は、
一部工事が始まったものの昨年末の進(しん)捗(ちょく)率は15%で、目標の37%を下回る。
首都圏3空港を結ぶ3空港高速鉄道も5年前に入札が行われたが、開業は2029年以降の見通しだ。
バンコクと北部チェンマイを結ぶ新線も日本が参加に意欲を示すが、開業後の需要は不明のままだ。

このうちタイ中高速鉄道(約609キロ)は、クーデター後の15年に事業化が始まった。軍政を批判する欧米からの協力はなく、タイ政府が頼ったのは中国。
ところが、「一帯一路」を推し進める習近平政権は資材や労務者、資金の一切を提供し実質的な支配下に置くことを条件にしたことからタイ側が反発。
関与は技術指導に限定され、その後の歩みは鈍い。

3空港高速鉄道(約220キロ)は財閥最大手チャロン・ポカパン(CP)グループ主導の企業連合が落札した。
だが、国際線が中心のスワンナプーム空港と国内線のドンムアン空港間は一定の需要があっても、前者には豊富な国内線もあり利用は限定的という見方がもっぱらだ。
このため主要駅周辺の商業開発をセットで入札を行ったことから、高い負担を懸念する企業が軒並み撤退。
落札したCPグループ連合も事業権料の支払いなどを巡って発注者側と見解が分かれ、工事は大幅に遅れている。

日本の主導が期待されるチェンマイ新線(約670キロ)も進展はない。日本政府やその企業連合はタイが中国に傾斜してから熱意を失ったままだ。
タイ中高速鉄道がラオスで中老鉄路と接続され、中国までの直通列車が計画される中、チェンマイ線は先のない盲腸線。こうした立地も不利に作用している。

経済回復を目指す政府にとって、3つの高速鉄道建設は欠かせない生命線だが、その歩みは驚くほど遅く、かつての勢いは感じられない。
(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一、写真も)
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2/26(日) 20:00配信
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