人生の「一発逆転」を狙ったことが裏目…

韓国でもマンションバブルが崩壊し、価格が下がり始めたことで様々な悲劇が起こっている。

そういった悲劇の主役たちは、「ヨンクル族」という新造語で呼ばれる人々。その意味は(魂までかき集めて住宅ローンを組んだ人)ということだという。年齢は20~30代。

背景にあるのは、韓国の若年失業率の高さだ。公式統計には表れにくい若年層の「体感失業率」は20%とも25%ともいわれる。

サムスンや現代などの一流企業への採用、もしくは公務員を目指した就職浪人組が多いのが、ヨンクルを生み出した一因とされる。同国の厳しい競争社会の中で、そういった「勝ち組」に入るのはかなり困難なのが現実。

中小企業に就職すると「負け組」と見なされてしまう。「負け組」、あるいはそうなってしまいそうな人々にとって、人生の一発逆転を狙えるのがマンションの購入だった。

相次ぐ経済失政
購入したマンションが値上がりして資産を築けば、彼らは「負け組」から「勝ち組」に変わることができる。韓国人にとって「住宅」は「学歴」や「車の種類」と並ぶ、人生のヒエラルキーを形成する「3大アイテム」と言われている。

ヨンクルたちにとって、時代の巡り合わせも悪かった。

まず、2017年に発足した前大統領・文在寅の政権は、不動産政策で失敗に失敗を重ねる。

文在寅が大統領に就任した頃、世界的な金融緩和を背景に、ソウルでもマンション価格が上がり始めた。それに対して文政権は、マンションの購入に様々な制限を加えることで価格を抑制しようとした。それが逆効果となって、さらにマンション価格が高騰したのだ。

「今買わないと買えなくなる」「買えば必ず価格が上がる」

そんな空気が広がる中、多くの若者は「魂をかき集める」ように様々な借金をして、マンション購入に走った。ところが、まさかの事態が起こる。

通貨が弱い「ウォン」の宿命
2022年からアメリカの急速な金融引き締めが始まった。金利の上昇である。

韓国は通貨の弱い国である。自国通貨・ウォンを防衛するため、韓国は金利を上げざるを得ない。

ドル金利が上がったにもかかわらず、漫然と異次元金融緩和を続けて極端な円安を招いた日本とは、対称的である。

韓国銀行は政策金利を2023年1月まで継続して引き上げ、現時点(2月26日)では3.5%となっている。当然、住宅ローンの金利も上がる。主要銀行の住宅担保ローンの変動金利は2022年1月の年3.57~5.07%から、2023年1月には5.27~8.12%まで上昇。

金利が上がれば、不動産価格が下がるのが経済のセオリー。2022年の年央からたちまちマンション価格も下がり始めた。

聯合ニュースの2023年1月16日の記事には、〈昨年12月は全国の住宅価格が前年同月比2.0%、ソウルも2.0%下落し、いずれも単月ベースで03年以降最大の下落幅を記録した〉とある。

これは表面的な数字だ。実際の市場価格は少なくとも10%から20%は下がっていると予想される。

すでにマンションを購入した人にとっても、悲惨な現実を招いている。

「お金がないので昼食を抜く」人も
住宅ローンの返済額が上昇したことで、日常の暮らしを圧迫。

「可処分所得のほとんどがローン返済に消えて、生活ができない」

「お金がないので昼食を抜く」

そんな切ないエピソードが伝えられる。

売却してローンを精算しようにも、値下がりしているので「売るに売れない」状況に追い込まれている人も多い。

榊 淳司(住宅ジャーナリスト)

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