韓国経済の減速が鮮明だ。なかでも景気の牽引(けんいん)役である輸出が赤信号だ。1月は前年同月比16・6%減、2月も7・5%減だった。
しかも主要輸出品である半導体は、42・5%もの激減だった。同国の産業構造の中心である半導体の不振は、経済の先行きを一挙に暗いものにしている。

他方で、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領によって2年間で30%超も引き上げられた最低賃金は、中小企業に多大な負担を与え、また若年層の就職を困難にしてしまった。
韓国の若者たちの海外逃避が話題になったのも記憶に新しい。

尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、規制緩和などの成長戦略を中心にして、民間主導で経済回復を目指している。
だが、成果は今のところ皆無だ。尹政権がいわゆる元徴用工問題のカードを切った背景には、前政権から引き継いだ韓国経済の苦境と経済政策の失敗がある。
そもそも徴用工問題は、韓国側の都合で発生した問題だ。日韓請求権協定を無視した蛮行といえる。

日本側はこの件では明白に被害者であるにすぎない。ところが、韓国政府傘下の財団が日本企業への賠償金を「肩代わり」し、その代わりに日本にはまたもや「謝罪」や「おわび」外交を促すつもりだ。
そもそも日本側に賠償責任はないので「肩代わり」ではない。

岸田文雄政権が尹政権側の提案したこの「解決策」に安易に乗ったことは残念だ。そして韓国側は一気に「経済攻勢」も強めている。
尹大統領は16日にも来日し、岸田首相と首脳会談をする。尹大統領に随行して韓国財界の面々もやってくる。大がかりな経済外交を展開するつもりだ。

もとから国家観も安全保障の定見もない経団連など、日本側の財界関係者はもろ手をあげて歓迎するようだ。日韓の財界で両国の若者たちのための共同基金をつくる案があるそうだ。
だが経団連などは、まず日本の青年たちへの無償の奨学金拡充すること、そしてわかりもしない経済政策に口出しするのをやめることが先決だ。

また半導体素材に関する輸出管理措置の解除を、韓国側は合わせて狙っている。
韓国が世界貿易機関(WTO)への提訴を中断するのを受けて、経済産業省は当初、韓国側と「協議」をするなどトンデモな発言をしていた。
だが半導体素材について、安全保障上で不適切な利用がないかどうか、そして日本に信頼される貿易相手国となるかどうかは、すべて韓国側の責任である。
日本はその是非を判断すればよく、「協議」の余地はない。さすがに西村康稔経産相は「協議」ではなく「対話」だと訂正した。

韓国の外交攻勢に日本側があまりにも無節操に対応しているのが、情けない。 (上武大学教授・田中秀臣)

2023.3/14 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230314-WGCSZKJYSNM5LLRFMVUNYVJU5M/