日本としては、韓国が土下座したものと受け取り、これで全面的な処分権があるとして、当然徴用問題以外にも慰安婦、福島産水産物、さらには独島(トクト)までも韓国側に解決を求めたのだ。

 「作戦に失敗した指揮官は許せても、警戒に失敗した指揮官は許せない」。ダグラス・マッカーサー将軍の言葉として広く知られている。ビジネスでは「取引に失敗した職員は許せても、接待に失敗した職員は許せない」という言葉がある。外交でも儀式は重要だ。そのため、16~17日の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の訪日での私の関心はオムライスだった。

 ジョージ・ブッシュ元大統領は居酒屋の有名店、バラク・オバマ元大統領は寿司の有名店、ドナルド・トランプは鉄板焼きの有名店でもてなされたのを見たことがある私は、尹大統領もオムライスの有名店で同ランクの待遇を受けるのだと感涙した。だが、首脳間の親交を深めるには、手のひら半分ほどのオムライス1皿だけでは足りないと思われた。夜遅くに検察庁で食べるジャージャー麺が懐かしくて検察官にカムバックしたというほどの尹大統領の食欲だと、オムライスはあっという間に消えてしまうはずなので、雰囲気が冷めてしまうのではないかと心配になった。「その有名店はトンカツでも有名なので、トンカツをつまみに生ビールを飲んで、オムライスで食事をしたのか」など、ありとあらゆる想像をした。

 ところが、すき焼きの有名店でまず夕食をとり、その後オムライスの有名店に行くという発表をみて、“メンタル崩壊”(激しいショック)に陥った。夕食を2回食べるというのか。多くの人に会うため昼食と夕食をそれぞれ2回ずつ取るという韓国の政治家の慣行に対応する細やかな配慮なのか、それとも、二次会では「ご飯が最高のおつまみ」という韓国の飲み方に合わせて、オムライスをつまみに生ビールでもてなそうということなのか、混乱した。

 オムライスに対する関心は、今回の訪日の最大の懸案である強制動員賠償問題において、被害者である韓国側だけですべて対応するとしてまとめられたことによるものだ。残りは、その代価として、日本が重要な外国首脳を格式張らずに歓迎する接待である独特な「おもてなし」を尹大統領にしたことくらいだったからだ。韓国の政府とメディアは、オムライスのもてなしがいかに手厚い歓待なのか口が乾くほど宣伝し、私も付和雷同した。

 首脳会談で岸田文雄首相が、慰安婦、福島産水産物の輸入、独島(トクト)問題などまで解決を要請したという日本メディアの報道が次々と出てきて、私は再び“メンタル崩壊”に陥った。今回の訪日で、「強制動員問題を韓国側だけで対応」‐「オムライスのもてなし」という“すっきりした”韓国と日本のやりとりで整理できるというのは、私の純真な考えだった。日本は、すき焼きまでつまみにしてもてなし、別のことも要求したのではないかという疑問が生じた。

 日本の問題に詳しい同僚の記者は、訪日前に「日本の誠意ある呼応はないだろう」と予想した。同僚の記者は、日本の侍文化では、一方が頭を下げたりひざまずくということは、相手方にすべての処分を任せることだとして、日本は韓国にむしろさらに要求することになるだろうと語った。

 同僚の記者が正しかった。尹政権の“強制動員問題を韓国側だけで対応”することは、日本にとっては韓国による“土下座”であった。土下座は、侍文化において、ひざまずいて額を床にまでつける丁寧なお辞儀によって謝罪を求める礼法だ。土下座は、自身の首までも差し出すほど、相手方に全面的に処分権を与えるという意味だ。

 キム・テヒョ国家安保室第1次長が、韓国の強制動員問題解決策に「実際、日本が驚いた」として、「こうした場合、韓国の国内政治で大丈夫かどうかはわからないが、韓国にとっては、これが待ち望んだ解決策であるようだ(と反応した)」と説明した。日本としては、韓国が土下座したとみなしたのだ。これで全面的に処分権があるとして、強制動員問題以外の他の懸案についても、韓国側に解決を求めたのだ。

 首脳会談で慰安婦問題なども議論されたという日本メディアの報道について、大統領室は日本がメディア工作をしているとして怒った。日本は間違っていない。日本としては、韓国が土下座をしたので当然のことを要求したのだ。間違っているのは尹政権だ。土下座したのに、土下座したことを分かっていないからだ。

 今後がさらに問題だ。日本は土下座した韓国に、すべての問題の解決を押しつけ続けるだろう。4年後に尹政権が退陣しても変わらないだろう。

 続きはソースで

チョン・ウィギル|国際部先任記者
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/46269.html