【マンション業界の秘密】

日本の平成大バブルが崩壊したのは1990年代。その後、「失われた20年」とも「30年」ともいわれる不況が続いた。

今、中国がやや似たような状況にあるように思える。2000年代から急激な経済成長を遂げてバブル的にGDPを膨張させてきた。その原動力はインフラ投資と言われる。

日本が技術協力してスタートした「新幹線」は、総延長距離が今や4万キロに達しようとしている。日本の新幹線の約13倍である。

同時に大量のマンションが建設された。これもインフラの一種。基本的に住宅が不足していた中国では、ある段階までは「造れば売れる」という市場環境だった。しかし、今は行き過ぎた供給を調整する段階に入ったと思われる。

4月4日に出たウォールストリート・ジャーナル(日本語版)記事のタイトルは「中国の『三線都市』マンション在庫処分に苦慮」。その記事には「売れ残った新築マンションの面積は35億平方フィートに上った。これは約400万世帯分に相当するとの推計もある」。

今の中国では新築マンションの在庫が少なくとも「400万戸」あるということだ。

ちなみに、昨年の日本で供給された新築マンションの総数は約7万戸である。レインズ東日本に登録されている中古マンションの在庫戸数は約4万5000戸。

中国の人口は日本の10倍を超える。そこから考えても400万戸という在庫は途方もない。一体どうなっているのか。

推測するに、その400万戸の背景には膨大な不良債権が存在するはずだ。マンションを供給した不動産デベロッパーや土地を供給した地方政府、さらにはその関連組織の「融資平台」などに絡まる不良債権の総額は、目がくらむ水準に達しているのではないか。

1990年代、日本は平成大バブル後の不良債権処理に手間取ったおかげで、経済が成長しなくなった。今や人口も減り始めた「衰退国家」になり果てている。

中国も今、莫大な不動産部門の不良債権に苦しみながら、人口も減りだした。あの国はハッキリと衰退の軌道を歩み始めているのかもしれない。

日本は現在、「失われた30年」をやや超えたあたり。経済は相変わらず元気がない。不良債権はすっかり処理し終えたが、人口減少と少子高齢化によって衰退途上と言ってもいいだろう。

中国も今、日本の10倍の規模で同じような道を歩み始めている。ただ、日本と異なる点はいくつかある。

まず、中国は日本のように1人当たりのGDPが先進国水準に達していなかった。まだ貧しい部分も多い。膨らませたバブルの規模も大きすぎる。その処理には日本の何倍もの痛みが伴うはずだ。

中国経済は、不動産バブルの崩壊で大きく崩れている。しかし、あの国は世界第2位の経済大国。日本とのつながりも無視できないレベルに達している。今後、日本経済も大きな荒波をかぶる可能性がある。

■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。

https://news.yahoo.co.jp/articles/7a0da3269df31f0c7ea53c5887cce6c889ee2198