拉致問題解決したい岸田首相と「日本びいき」の金正恩とで事態は動くか
ー中略ー

・すでに水面下で接触?

 日朝間に水面下の接触があった可能性を提起した専門家もいる。
世宗研究所のチョン・チャンス日本研究センター長は『世界日報』とのインタビューで、こう分析した。

「最近は新型コロナ感染病による国境封鎖局面が変わり、急速に水面下接触があった可能性がある。
しかも在日同胞などの人的ネットワークを持っている日本としては可能な話だ。
(北朝鮮が)経済的イシューや米国との疎通などの目的があり、手を差し伸べる可能性もある。
(日朝対話は)北朝鮮としては韓国政府を抜いて主導権まで握ることができる方法」

 進歩政権の金大中、盧武鉉政権で統一部長官を歴任した丁世鉉(チョン・セヒョン)氏も、
「北朝鮮が深刻な食糧問題を解決するために日本との首脳会談を望んでいる」と主張した。

 丁氏はラジオに出演し、「3年間も新型コロナ禍で国境が閉ざされていて、食べ物や着るものなどが中国やロシアから何も入ってこなかった。
2006年から始まった国連の対北朝鮮制裁によって物資が入ってこずにいるうえ、
今年は中国から肥料が入ってこないため田植えに大変苦労している」と北朝鮮の深刻な食糧難に言及。

 そのうえで「日本と植民地統治の賠償問題を2009年に議論していたところ進展がなかったが、
今回また(日本と)会えば必ず決着をつけるという計算があるだろうし、そうすれば大金が入ることを北朝鮮は期待しているだろう」と付け加えた。

 ちなみに韓国の外交専門家の間では、日朝国交正常化の過程で北朝鮮が得られる対日請求権補償金は、
少なくとも50億ドルから最大200億ドルに達するものと推算されている。

・金正恩は「メイド・イン・ジャパン」愛好家

 北朝鮮専門家のイ・ヨンジョン記者は、
「在日韓国人出身の母親を持つ金正恩総書記は生まれながら日本に対してそれほど敵対感を持っていないという点が日朝関係の鍵になり得る」と説明する。

 金正恩氏は、日本製品愛好家として知られている。
ー中略ー

イ・ヨンジョン記者は、金総書記のこのような行動が母親の高英姫(コ・ヨンヒ)の影響を受けたためだと分析する。

「在日朝鮮人総連合会出身の北送同胞である高氏は1960年代末、家族と共に北朝鮮に移住し、
万寿台芸術団で活動していたが、金正日の目に入り28年間一緒に暮らした。

 金正恩氏が幼い頃、実母の高氏から受けた影響は、今も彼の意識を支配しているものと見られる。たとえば、金正恩体制に入って、
北朝鮮の日本に対する態度が変わりつつある。日本に対する非難のレベルや頻度は、最近になってはっきりと低下している。
非難はするものの、反日感情がそれほど骨身に染みてはいないという感じがする」

・「日本は過去に、韓国が予想もしていない局面で北朝鮮との国交交渉を行っていた」

 イ・ヨンジョン記者が特に注目している状況は、5月2日に行われた日本人拉致被害者家族会の米国訪問だ。
ー中略ー

 振り返ってみると、日本は韓国が意外な状況だと考える局面で北朝鮮との国交交渉を行っていたし、
誰も事前に知ることができないほどの第三国での水面下の接触を通じて行われた」

 日本と北朝鮮との高官級協議の可能性に関するメディアの質問に対し、
韓国外交部は「韓国と米国、日本は北朝鮮との対話の扉が開かれていることを一貫して明かしてきた」と答えた。
尹錫悦政権はすでに、北朝鮮の非核化対話を前提にした米朝関係正常化に外交的支援を行うという意志を表明しているだけに、
北朝鮮のパートナーが米国でない日本でも立場には変わりがないという意味だ。

 南北間の対話の扉が閉ざされた状況で、
最近日本と北朝鮮との間に流れている微妙な気流が朝鮮半島の情勢変化の突破口になりうるか。
韓国の人々も固唾をのんで見守っている。
李 正宣

全文はソースから
2023.6.9(金)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75509