全国に誇る愛媛の養殖魚。実は今、危機に直面しています。理由は、世界でも指折りの巨大消費地にありました。混乱する養殖現場。生産者の声です。

けさの西予市明浜町。この生け簀で育てられているのは、1キロ当たりおよそ2000円で取引される高級魚のシマアジです。

漁業者:
「5000から6000尾。この小割(生け簀)は、中国に行きます」

中国への輸出がおよそ半数を占めるという、明浜育ちの養殖シマアジ。

しかし…

県漁協明浜支所 清水工運営委員長:
「急きょ中止という連絡を受けまして、大変心配しています」

突然、中国向けの輸出が出来なくなったのです。

その理由は、中国の税関当局が、福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、日本からの水産物に対し、全面的な放射線検査を始めたことが挙げられます。

松野官房長官:
「日本からの食品輸入規制緩和撤廃に向けた国際的な動きに逆行するものであり、強く懸念します」

中国の対応により、鮮度が重視される多くの海産物が、長時間税関で留め置かれるなどの影響が愛媛にも出ているのです。

愛媛の水産品にとって、中国は韓国、アメリカに次いで3番目の販売額を誇る重要な国。

シマアジなどを仕入れて中国向けに輸出してきた宇和島市の水産会社では…

イヨスイ 荻原達也社長:
「6月の末、30日だと覚えています。中国の税関から『放射線の検査を厳しくするぞ』と『気を付けてくれ』という連絡が中国の輸入先の方で先にあった。輸出はしておりません」

この会社では現在、鮮魚、冷凍、活魚のいずれの方法でも中国向けの輸出が実質不可能になっています。

荻原さん:
「他の業者の話を聞くと、一週間かかりましたとか10日かかりましたとか。通関の間に魚が傷んでしまって廃棄処分になったという話も聞いております」

会社では、行き場を失った魚を販売したいと模索を続けていますが…

荻原さん:
「国によって地域によって違うんですが、要求される規格が違う、品質が違う、物が違うということで、なかなか、他へ、また国内へ向けにくい。特にシマアジあたりは、養殖される4割以上は、海外に行っていたのではないか。それが国内に返ってくるとなると、大変需給バランスが崩れることになるので、大変苦慮しております」

“風評被害”とも思える状況に、県は。

県漁政課 大野道善課長:
「水産事業者に聞いたところ、中国向け輸出は実質不可能になっているが、仕向け先・輸出先の変更を行い、何とかやり繰り出来ている状況。中国において、科学的根拠に基づかず求められる、こうした放射線検査については撤廃を実現するよう中国政府への申し入れ、早期の対応をさらに国に対してお願いしていきたい」

7/25(火) 19:45 南海放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/d0c20d996ee8031e6365140d2ed79404840b507a