化粧品などの免税販売を巡り、「阪急阪神百貨店」(大阪市北区)が2022〜23年に大阪国税局の税務調査を受け、
消費税計約2億円を追徴課税されたことが、関係者への取材でわかった。
免税対象外となる日本居住の中国人が大量購入するなど転売目的が疑われる取引が相次ぎ、
約20億円分について免税販売の要件を満たしていないと指摘された。

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 免税販売を巡っては、商品を転売し、消費税分の利ざやを稼ぐ不正行為が問題となっている。
国税当局は百貨店側に販売時のチェック態勢の強化を求めている。

 消費税法では免税購入は原則、入国から6か月未満の訪日外国人客ら「非居住者」が対象。
自ら消費するための土産物や化粧品などの消耗品は1回50万円まで認められる。営利目的での転売は禁じられる。

 関係者によると、税務調査では、大阪市北区の「阪急うめだ本店」や「阪神梅田本店」など複数の店舗で、
日本に居住する中国人らに日用品や化粧品を販売するなど、免税販売の要件に該当しない取引が多数見つかったという。
期間は22年3月期までの3年間で、コロナ禍により訪日客が激減していた時期と重なっている。

 調査では、同一人物が49万円台の購入を繰り返すケースが認められた。
大半で国外に商品が持ち出された形跡はなく、転売目的だった可能性が高いという。

 中国人らはいずれも税逃れを主導する業者からSNSなどで指示を受け、資金提供を受けて免税品を購入。
転売による利ざやの一部を手数料として受け取っていたとみられる。

 阪急阪神百貨店は免税手続きの際、パスポートの入国時期などを見て対象かどうかをチェックしているが、
適切に確認できていなかったとみられる。

 国税局は同百貨店に対し、3年間の免税売り上げのうち、約20億円が要件を満たしていないと指摘。
過少申告加算税を含め約2億円を追徴課税した。同百貨店は修正申告し、全額納付したという。

 同百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングは「国税局の指摘及び指導については 真摯しんし に受け止め、
今後の対応策を含めて国税局と確認しながら進めている」としている。
同百貨店は、大阪府や兵庫県などで15店舗を展開し、うち5店舗で免税カウンターを設けている。

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・「制度限界ある」
 中央大の酒井克彦教授(租税法)は「百貨店側のチェック態勢が担保されていないと制度の適正運用はできず、
結果的に不正行為を許してしまっている状況は大きな問題だ。
一方、店側だけの確認に頼る制度には限界がある。出国時に、国外に持ち出す商品を確認してから、
税還付をする『リファンド方式』を導入するなど、国には抜本的な対策が求められる」と指摘している。

・組織で不正主導、国・店は対策強化
 百貨店での免税販売を巡っては、転売目的の購入が相次いでおり、背後には不正を主導する組織の存在が指摘されている。

 大阪国税局は昨年までに、大阪市の百貨店などで免税品を大量購入した中国人ら7人が転売に関与したとして、
消費税約7億6000万円の徴収処分を決めた。
7人は国内に拠点を置く業者に雇われ、転売による利ざやの一部を手数料として受け取っていたとされる。

 不正を防ぐため、国税庁は2020年4月に免税手続きの電子化を導入。
購入者のパスポート情報や商品の額などのデータが免税店から国税庁に送られ、税関と情報を共有するなどして監視を強めている。

 日本百貨店協会(東京)によると、加盟する全国約140店舗は4月、転売防止システムを導入。
購入回数や金額、数量が一定基準を超えた場合、警告が出る仕組みで、協会は「システムは不正な購入を見抜く判断材料になる。
警告された場合、大半のケースで販売をやめている」としている。

2023/07/27 11:12
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