韓国にとって最重要の貿易収支が通関ベースで黒転したということで、「回復の兆し」なんて話が出ています。
しかしながら、Money1でも先にご紹介したとおり、輸出金額は全く回復しておりません。

2023年は01〜07月20日まで、どの月も輸出金額は対前年同期比の増減でマイナスなのです。

https://money1.jp/wp-content/uploads/2023/07/sozai_519.jpg

これで貿易黒字に転じたというのは、単に輸入金額が輸出よりも大きく対前年同期比で減少しているのが原因です。
輸入というのは「外国からする消費」ですから、つまりは消費が減少しているわけで、これは決して喜べる話ではありません。

「ひょっとして韓国うちは不況型黒字なのでは……」という記事が韓国メディアにも出始めました。

例えば、2023年07月26日『東亜日報』は「不況型成長」という社説を出しています。

記事のタイトルは「『不況型成長』の泥沼に陥った韓国、内需を生かして輸出の空白を埋める必要がある」です。

貿易の話ではなく、GDP成長率予測が韓国だけどんどん下げられていることについてですが、基本的には同じ話です。

記事から面白いところを以下に引用します。なぜ同じ話なのかというと……。

(前略)
韓国の実質GDPは第1四半期0.3%に続き、第2四半期も連続してマイナス成長を免れた。

しかし、前四半期の成長をリードした消費は0.1%減少に戻り、設備・建設投資もマイナスだった。

前四半期プラスだった輸出も1.8%減った。

それでも成長したのは、国際原油価格の下落で輸入が4.2%も減少したためだ。

輸出萎縮を招いた半導体不況、低迷した中国経済も回復が遅れている。

結局凍った内需の消費と投資を生かすことができるかに今年経済の成績表が決まる。

最近の消費・企業投資萎縮は民間にお金がなくてではない。

韓国銀行はコロナ19が進行された3年間、韓国家計に100兆ウォンを超える超過貯蓄がたまったものと推算する
(この点はMoney1でも先記事でご紹介しました:引用者注)。

GDPの5%にもなる莫大な金額だ。

パンデミックで消費する機会が減ったが、賃金所得などは着実に上昇した影響だ。

コロナ19が終わったにもかかわらず、このお金が消費拡大、負債返済に使われず、住宅市場の不安を育てる雷管として作用している。

1,089兆ウォンに上昇した財政赤字とインフレ懸念で政府も景気浮揚にお金を使うのが難しい状況だ。

低成長局面を打開するには、民間に蓄積されたお金が内需の消費と投資に流れるようにしなければならない。
(後略)

⇒参照・引用元:『東亜日報』 https://www.donga.com/news/Opinion/article/all/20230725/120411159/1

GDPというのは以下のように計算します。
https://money1.jp/wp-content/uploads/2022/03/07_20220302_img.jpg

記事にも書いてあるとおり、消費も投資も減少していて、政府もお金をまいているわけではない(はっきりいえばこの時点で不景気です)。
ではなぜGDP成長率がプラスになっているかというと――輸入が大きく減少して「純輸出」が黒転で大きくなったためです。

ですから「不景気の下もとでの経済成長」となるわけです。『韓国銀行』や企画財政部は分かっているはずですが、妙手はありません。

肝心の輸出を伸ばす手が見つからない限りは。

だって――貿易に依存した経済の韓国は、輸出が伸びて黒字が拡大しないことには企業にお金が落ちず、
落ちないと給料も上がらす、消費も拡大しないからです。また、手元不如意なら企業も投資にお金を使わないでしょう。

それどころか、家計が(借金も返済せずに)ためこんだ100兆以上のお金が資産に流れ込むと……さあどうなるでしょうか。

(吉田ハンチング@dcp)
2023.07.27
https://money1.jp/archives/109977