[上海/シドニー 7日 ロイター] - 中国は1978年に当時の最高指導者、トウ小平氏の改革解放政策で海外直接投資(FDI)に門戸を開いた。以来、外国企業は市場へのアクセスと安価な労働力を手に入れるために数千億ドルを投じて中国で事業買収や工場建設を進め、こうした投資資金の流入が人民元の支えになってきた。

中国への直接投資は緩やかに減っていたが、今年第2・四半期にそのペースが急速に加速、25年前の統計開始以来の水準に落ち込んだ。長年の基調が変化しつつあるとの観測が広がっている。

企業の幹部などによると変化は現在進行形で、設備投資決定の背後には長期にわたる政治的懸念がある。つまり人民元は、最も強力な支えの1つだった直接投資から、今では圧力を受けている形だ。
調査会社ロジウム・グループの中国市場調査部長、ローガン・ライト氏は、「FDIは長年、為替レートを大きく変動させる要因ではなかった。年500億ないし1000億ドルの流入超過が普通だったからだ」と説明。「しかしそれが今のように流出超過に転じると、かなり大きな調整だ」と話す。

中国国家外貨管理局(SAFE)が先週発表した統計によると、中国の海外直接投資は第2・四半期、対内投資が49億ドル弱に減少した一方、対外投資が増え、純流出が過去最高の341億ドルに達した。

投資家やアナリストによると、対内直接投資が落ち込んだのは、中国と西側諸国の間の競争や政治的摩擦を巡って企業が神経をとがらせた結果だ。すでに貿易や投資の制限、外交関係の悪化が起きている。

事情を知る関係者によると、バイデン米政権は今後数週間内に新たな対中投資規制を導入する可能性が高い。日本、米国、欧州はすでに中国企業向けの先端半導体製造装置の輸出を制限し、中国が報復として希少鉱物の輸出を制限している。

外交面の緊張の高まり以外にも、中国は3年間にわたる厳格な「ゼロコロナ政策」による検疫や都市封鎖で企業からの信頼が低下していた。

中国政府の一部産業に対する規制や取り締まり、米コンサルティング会社への家宅捜索も不安をあおり、企業は次の狙い撃ちはいつ、どこかと不安にさいなまれている。

「中国に投資したいという顧客は1社もいない」と話すのは法律事務所ブハルターの株主ジョン・ラミグ氏。「中国の事業を売却するか、もしくは中国で製品を調達しているのであれば別の調達場所を探しているかのどちらか」で、「状況はほんの5年前と比べても様変わりしている」

オックスフォード・エコノミクスのアナリストによると、現地法人を一から作るグリーンフィールド投資は何年間も減少基調で、2010―11年の年1000億ドル前後が22年にはわずか180億ドルに落ち込んだ。この種の投資は、先を見据えて投資するムードを最も良く映し出すものだ。

<大きな決断>

対中直接投資は長年にわたり、世界貿易の確固たる一部と見なされてきただけに、その急減は地殻変動への不安を呼び、注目を集めている。

気まぐれな金融資産投資と異なり、企業の設備投資は周期的ではあるが、企業が生産基盤を確立して拡大するにつれてより粘り強く安定したものとなる傾向がある。つまり直接投資が揺らげば経済に大きな影響が及ぶ。

為替相場への圧力はすでに顕在化している。SAFEの最新統の統計によると、中国の銀行を通じた対外直接投資のためのドル購入額は今年に入って一貫して、対内直接投資のための人民元購入額を上回っており、その結果、海外直接投資は6カ月連続で流出超過となっている。

こうした傾向は商務省の統計にも表れており、1─5月の対内直接投資は5.6%減少し、過去3年間で最大の減少幅を記録した。

ドルが他国で下げているにもかかわらず、人民元相場は年初から対ドルで約4%下落した。人民元を支えているのは、レートを一定のレンジ内に誘導する中銀の措置と、国営銀によるスポット市場での買いだけだ。

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(Samuel Shen記者、Tom Westbrook記者)
https://news.yahoo.co.jp/articles/cb2adffe21a8dd7dc121bdd3bf989bbd09c9b9f4