ごく少数の超大国を除き、現存する国の大部分は外部勢力の侵略と植民支配のつらい歴史を経験した。特に19世紀後半から20世紀中盤にかけての帝国主義時代には、なおのことそうだった。

アフリカはもちろん、中東から極東に至るアジア大陸全体で、まともな独立国は日本とタイの2カ国だけだった。当時は国の武力行使が合法的主権行為と見なされ、いかなる国際法も武力を通した領土合併や植民支配を違法と規定しなかった。それが違法化されたのは第2次世界大戦後のことだ。

その時期に最も厳しい苦難の歴史を経験した国は断然、アジアのベトナムと欧州のポーランドだった。

ベトナムは1883年のフランスの植民統治、1940年の日本軍進駐、1950年の対仏独立戦争、10年間の対米戦争などで全国民の10%に当たる800万人を失った。ポーランドはドイツ、ロシア、オーストリアによって国土が分割され、123年もの間地図から消えていたが、1918年に独立を回復した。

その後1939年にナチス・ドイツとソ連によって再び分割合併されたが、1945年に復活し、その6年間でユダヤ系300万人を含む560万の国民がナチス・ドイツの手で命を奪われ、軍将校・警察・知識人など指導層2万2000人がソ連軍によって集団虐殺された。

歴史学者のアーノルド・トインビーは「人類にとって最も大きな悲劇は、過ぎ去った歴史から何の教訓も得られないところにある」と語った。これは「過去を忘れた国に未来はない」という欧州の古い格言とも相通じる。過去の歴史を教訓にして二度と同じ不幸が繰り返されないように備えなければならない、という意味だ。

国家間の関係において、そういう歴史の教訓は主に将来の挑戦と災厄に備えた富国強兵、すなわち豊かな国と強い軍事力の建設を意味する。過去の歴史的怨恨を忘れず長く記憶せよという意味では決してない。

ベトナムは過去の全ての加害国に向けて「過去にふたをして未来のために協力しよう」というメッセージを伝えている。経済発展を通した富国強兵が最優先の国家目標だからだ。

かつて金大中(キム・デジュン)政権が「韓国軍のベトナム良民虐殺疑惑」について共同調査と補償の用意があると伝えた際、ベトナム政府は「過去史に対する一切の議論に反対する」としてこれを即刻拒否した。

過去に2回の国家消滅を経験したポーランドは、ロシアの脅威から逃れると、冷戦終息後真っ先にNATO(北大西洋条約機構)に加入して民族の長年の宿敵であるドイツと安全保障協力を強化してきた。昨年ウクライナ戦争が始まると、ロシアの侵攻という悪夢から大々的な軍備増強を急いでいる。

2023/08/13 06:24
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