8/25(金) 17:01配信
西日本新聞

 中国や韓国でも、福島第1原発処理水の海洋放出の波紋が広がっている。北京のスーパーや飲食店から日本の鮮魚が姿を消し、釜山の水産市場は客が激減し「生活できない」との悲鳴が上がる。

 「7月から日本の水産物は仕入れていない。全て国産か他国の物です」。24日午後、北京市にある日本食品を主に扱うスーパーの店員は説明した。売り場には中国産のアジやマダイ、ウニなどに加え、オーストラリア産のマグロが目立つ。

 中国政府が7月上旬、日本からの水産物の通関検査を強化。通関に鮮魚の冷蔵品は約2週間、冷凍品も約1カ月を要しているとされ、日本からの輸出は難しくなっている。

 日本産は安定した人気を誇り、九州の多くの自治体は販路拡大に力を入れてきた。規制がいつまで続くかは見通せず、上海駐在の関係者は「地元産の知名度が上がっていただけに残念だが、今できることをやるしかない」とこぼした。

 政府が「安全」と説明する韓国でも打撃は大きい。韓国の大型機船底引網水産業協同組合の林?暈(イムジョンフン)組合長は「『もう水産業は終わりだ』『死活問題だ』という嘆きの声しかない」。福島第1原発事故直後に国内産も含め水産物の消費量が4割程度減少したといい、「政府や国際原子力機関(IAEA)が安全と主張しても消費者の不安は取り除けない。漁業者はもちろん、加工、流通、販売業者、造船業に至るまで被害は計り知れない」と嘆く。

 南部釜山市のチャガルチ市場は放出が始まった24日午後、人影もまばら。魚介を扱う店は放出計画が報じられた6月ごろから売り上げが減り、今は例年の約15%減。産地を気にする客が増え「日本産」と答えると買わない客もいる。男性店主は「放出でさらに売り上げが減る。もうやってられない」と肩を落とした。

 ソウル最大の鷺梁津(ノリャンジン)水産市場も閑散とした。水産業の男性は「水産物は安全なはずなのに、野党やマスコミが大騒ぎしているせいで客が来なくなった」と風評被害に憤った。現地メディアによると、ロッテなどの大型百貨店は、9月末の大型連休や来年の旧正月に需要が増える贈答品用水産物の輸入先を、日本から遠い北米や南米などに切り替えているという。 (北京・伊藤完司、釜山・岩崎さやか、ソウル山口卓)

https://news.yahoo.co.jp/articles/19d7f77fdf127bf86323289655c267af7929e05d