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屋台が軒を連ねる福岡・中洲。訪日客にも人気だ

屋台の営業ルールなどを定めた全国初の「福岡市屋台基本条例」が施行されてから9月1日で10年となる。
規制強化で一時は衰退に拍車をかけたが、店主の高齢化や新型コロナウイルス禍も乗り越え、回復基調にある。
国内有数の100軒超が軒を連ね、赤ちょうちんが博多の夜を彩る様子は訪日客にも好評で盛り上がっている。

「条例施行」1日で10年
■多様な料理
8月22日夜、韓国の釜山から福岡市・中洲の「博多屋台 中洲十番」を訪れた大学生、朴慧彬(パク・ヘビン)さん(18)は
「日本の夏を感じたくて来た。ラーメンもおいしい」と満足げ。

店主の田中博臣さん(50)によると、客の4割近くは外国人観光客で、訪日団体旅行解禁もあり、最近は中国人客が増えてきた。
「開店前から待っている客も多い」と汗を拭った。

米有力紙ニューヨーク・タイムズは1月12日の旅行欄で「2023年に行くべき52カ所」を特集し、
世界各地の19カ所目に福岡市を取り上げた。夜は屋台が並び、焼き鳥やおでんなど多様な料理が楽しめると評価した。

福岡市は、各屋台の名物料理を国内外にインターネット上で紹介してきた。
7月ごろから発信を強化しており、福岡市移動飲食業組合の迎敬之組合長(49)は
「市が屋台を宣伝してくれる効果は大きい」と歓迎する。

■一代限り
戦後、国内では引き揚げ者らが屋台を経営して生計を立てたが、衛生面を懸念した連合国軍総司令部(GHQ)の意向で廃止に。
ただ、福岡では屋台経営者が組合を設立して存続運動を展開し、国などとの交渉で営業にお墨付きを得た。

最盛期の1965年ごろには市内で400軒を超えた。歩道の占拠や汚水のたれ流しなどが問題化したため、
95年に福岡県警が店主を「原則一代限り」とし、市も追随したことなどで減少した。

その後、市は屋台が重要な観光資源でもあることから共生を模索。
13年9月に施行した屋台基本条例で料金表の明示や市道の使用時間の順守などルールを明確化し、
16年からは公募による新規参入を認めた。

■安心
地域活性化の観点でも屋台は注目されてきた。
北海道帯広市では01年から「北の屋台」と名付けられた屋台村が人気で、鹿やヒグマなどのジビエ料理を提供する店も。
冬でも7000人ほどが訪れるという。広島県呉市にも約10軒が立ち並ぶ蔵本通りがある。
海外では韓国・ソウルの広蔵市場や台湾・台北の士林観光夜市などが有名だ。

福岡市の屋台に関し、西武文理大の中谷勇介教授(経済政策)は「不明朗会計など以前はグレーな部分もあったが、
条例施行後は訪日客も安心して利用できる存在になりつつある」と指摘した。

夕刊フジ 2023.9/1 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20230901-3TH46MPG3FISXIK7CYLQKHKVXU/