韓国で店員がいない無人店舗が増えている。注文、会計、食事まで誰とも話さずに済む気楽さと安さが受け、
若者を中心に人気が高まっている。増加の背景には人件費の高騰で従業員を雇えない店側の切実な事情もある。

【動画】韓国で普及しているラーメンの自動調理機
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 ソウル中心部、鍾路区の大通り沿いにある「ラーメンコンビニ」。1階には8席のカウンターがあり、
壁側の棚には数十種類の袋ラーメンが積み上げられていた。
タッチパネルで好みのラーメンを選んで会計し、自分で棚からラーメンを取って調理するシステムだ。

 反対側には韓国で普及している自動ラーメン調理機が並ぶ。特殊な紙製の鍋にラーメンと調味料、
キムチやもやしなどの無料のトッピングを入れて調理機にセットすると煮沸が始まり、3〜4分で出来上がる。

 値段は4千〜4800ウォン(約450〜540円)。昼食時には次々に客が訪れ、黙々とラーメンを作っていた。
留学中の中国人女性(23)は「安くて、早くて、誰ともしゃべらなくていいから気楽だ」と話した。

 最大の繁華街、江南区にあるコンビニ、イーマート24スマートコエックス店は、
入店前にタッチパネルでクレジットカードなどを認証してスマートフォンでQRコードを受け取る。
店内で商品を選んで店外に出ると、レジを通さなくても決済が自動完了する仕組みだ。

 無人のコンビニは2022年末時点で全国3310店(夜間のみ無人も含む)で、前年比55%増、20年比で約6倍と急増している。
業種もカフェ、アイスクリーム店、弁当店、文房具店など多岐にわたり、住宅街にも広がっている。
ほぼ全てカード決済で、24時間営業だ。

 韓国のキャッシュレス決済の割合は93・6%(20年時点、日本の経済産業省調べ)と極めて高く、
有人店舗でもタッチパネルで注文してカード決済するのが一般的だ。店員に注文したり、お釣りの受け渡しをしたりする必要がない。
監視カメラが店内外に細かく張り巡らされていることも無人化を後押ししている。

 ただ近年の急激な増加は、高騰する人件費を抑えたい店舗側の事情が大きい。

 文在寅(ムンジェイン)前大統領は「所得主導成長」を掲げ、5年間で最低賃金を42%引き上げた。
24年の最低賃金は全国一律で時給9860ウォン(約1111円)に上がることが決定。東京都の1113円(10月から)と同程度だ。
さらに韓国は夜間や休日は日中の5割増しで支払う必要があり、
人件費が経営を圧迫して廃業に追い込まれた飲食店や商店が相次いでいる。
全国コンビニ加盟店協会は声明で「隣国日本をしのぐほどの最高水準の賃金を支払わなければならない」と反発し、対策を求めた。

 一方、無人化は若者の雇用を奪う側面もある。韓国の23年7月の失業率は2・7%だったが、
15〜29歳では6・0%と高い水準となっている。
企業は景気の減速も重なって採用に慎重になっており、韓国経済人協会(韓経協)が大手500社を対象とした調査で、
今年下半期(7〜12月)の大卒新規採用計画を立ててないか、採用自体がないとする企業は全体の64・6%に上った。
韓経協は、今年の大卒就職競争率が平均81倍になると予測している。

西日本新聞社
9/15(金) 9:10配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/1971571f393320d5c32053cf650be1fe94af8367