9/24(日) 6:02 JBpress (武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)

 韓国国会は9月21日、検察から提出されていた最大野党「共に民主党」代表・李在明氏に対する逮捕同意案を採決し、賛成149、反対136、棄権6、無効4で可決した。逮捕状請求の理由は、北朝鮮に対する不正送金に関与した疑いや「柏?洞(ペクヒョンドン)開発事業特恵疑惑」によるもの。

 可決に必要な出席議員の過半数は148である。つまり政府・与党・検察にとってはわずか1票差での勝利となった。投票に参加した民主党議員は167名。つまり民主党の中から30名ほどの造反者が出たことを意味する。朝鮮日報は与党や与党に近い政党・無所属議員が賛成票を投じたとすれば少なくとも「野党29人が反乱」したと見られる、と報じている。

■ 李在明氏逮捕に向け大きな前進

 国会での同意案可決を受け、今後逮捕状発布の是非を判断する裁判所の令状審査が実施される。

 実は裁判所の逮捕状審査は発布が認められないケースも2割近くあり、事態の推移は未だ不透明な部分はある。しかし、朝鮮日報が指摘するように、李在明氏はこれまで、疑惑について「関係していない」「知らない」との説明に終始しているが、それが事実でないことも関係者の証言から判明している。

 裁判所の令状審査においては、逃亡や証拠隠滅の可能性の有無などが検討される。

 韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官は、国会で逮捕の必要性について「多数の関係者が組織的に関与しており、共犯者に対する懐柔や圧迫を通じた証拠隠滅の懸念が非常に大きい」と説明した。実際、李在明氏にはこれまで自身の事件への関与を隠蔽しようとしてきた経緯があり、李在明氏にとって有利な状況とはいえない。

 そう考えれば検察は、「李在明氏逮捕」に向け最大の関門を突破したことになる。

 李在明氏の逮捕同意案が可決されたことで、民主党内ではこれに賛成票を投じた犯人探しが始まるだろう。国会での採決前に、民主党の事務総長は「可決票を投じる議員を徹底追跡し、探し出して政治的生命を絶つ」と党所属議員を脅迫していたからだ。

 文在寅政権の時は、民主党が強力に政権を擁護したため、文在寅政権で起こったスキャンダルは致命傷にまでは至らず、そのおがけで高い支持率を誇ってきた。しかし、今回の党代表逮捕同意案の採決で多くの離反票が発生した背景には、民主党の不逮捕特権乱用に対する国民の批判を意識する議員が増えていることがあったに違いない。その危機感が反対票投票という形で表れたのである。

■ 民主党から反日を主導する人はいなくなった

 もしも李在明氏が実際に逮捕されるような事態になれば、日本にも大きな「影響」が出ることになるだろう。すなわち、民主党の「反日路線」が終焉を迎える可能性が高いということだ。

 民主党関係では、挺身隊問題対策協議会元理事で国会議員(現在は無所属)の尹美香被告も9月20日の控訴審判決において当時の横領などの罪で懲役1年半・執行猶予3年の判決を受けた。尹被告は最高裁に上告するようだが、そこで有罪が確定すれば、議員を失職することになる。このように以前のように民主党内や民主党に近い立場で反日活動をする主要人物が議席を失いかけているのだ。

 そうした影響もあるのか、最近の韓国の「反日扇動」には、国民もついてこなくなっている。

 いま民主党が進めている福島第一原発処理水放出に対する反対運動は、李在明代表が主導してきたが、それでも前回の反対集会への一般市民の参加は2000人程度に減少している。李在明氏逮捕となれば、さらに勢いを失う可能性がある。

 処理水放出への反対は、李在明氏に圧力をかける尹錫悦政権への反発として続くことは考えられるが、それは反政府闘争であって、反日という意味は薄れてくるのではないか。今後、民主党の反日活動がさらに勢いを失う事態は避けられないだろう。

https://news.yahoo.co.jp/articles/36027aadd3350546957c63ab0a07b2d859e1153e