中国の習近平国家主席が進める世界的な経済・軍事領土拡張事業である「一帯一路(陸と海のシルクロード)」が9月7日で10周年を迎えた。中国は一帯一路を次の段階に拡大するため、「一帯一路国際協力首脳フォーラム」を10月17日に北京で開くなど大々的な広報戦略を繰り広げている。ロシアのプーチン大統領をはじめ、約30カ国の首脳が参加する予定だ。

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 中国は2010年、日本を抜き世界2位の経済大国に浮上。それから3年後に一帯一路を宣言し、「パックス・アメリカーナ(Pax Americana・米国による平和)」に挑戦状をたたきつけた。習主席の就任から6カ月後の電撃的な発表だった。それから10年間、一帯一路で参加国は152カ国に増えた。上海復旦大学グリーン金融開発センターの報告書によると、一帯一路に関連する中国の累計投資額(22年現在)は9620億ドルに達した。

 一帯一路を通じて中国が得た収穫は、中央アジアやアフリカなど開発途上国で影響力を高めたことだ。パキスタンのカロット水力発電所(22年完成)、スリランカのハンバントタ港(4段階に分けて建設、来年完成予定)など一帯一路を掲げた大規模インフラ整備を主導し、拠点を拡大した。

 一方で「チャイナマネー」も大きく影を落としている。「プレゼント」だと思って中国による投資を受け入れたが、高金利に耐えられず破綻の危機に追い込まれる国が増え続けている。 中国は一帯一路関連の借款に国際通貨基金(IMF)による借款の約2倍となる年5%の金利を適用する。米グローバル開発センター(CGD)によると、一帯一路参加国のうち23カ国が中国に対する高金利債務の償還負担で破綻の危機に直面した。

 一帯一路の次の10年は軍事力の拡張につながるとの警告も聞かれる。米シンクタンクの民主主義防衛財団(FDD)は今月2日、報告書を通じ、「中国は天文学的な資金を貸し付け、インフラを整備し、借金を返済できなければ港を軍事基地に転換する方式で一帯一路を軍事力増強の土台にしている」と指摘した。

 一帯一路構想は巨大な資金力を武器に中国に近い東南アジア、中央アジアをはじめ、アフリカ、欧州を鉄道と海路で結び、海を越えて米国の「裏庭」である中南米まで中国の影響圏に置こうとするものだ。 中国の「覇権掌握の野心」を恐れる米国など西側諸国の人々の間で中国に対する評価が否定的に変わる一方、一帯一路で恩恵を受けた国々では中国を好意的に評価する人も増えている。今年7月に発表された米ピュー研究所による意識調査の結果、ケニア、ナイジェリアなど一帯一路を通じた中国資金の流入が多かった国では中国に対して「否定的」と答えた人の割合がそれぞれ23%、15%にすぎなかった。米国で83%、韓国で77%が否定的だったのとは対照的だ

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 一帯一路10年の光と影は交錯している。中国の直接的な資金支援に頼らず、技術協力などで利益を得たサウジアラビアなどが代表的な恩恵国に挙げられる。国家規模が比較的大きいロシア、カザフスタン、ブラジルなども中国から10億ドル以上の大規模インフラ建設プロジェクトを誘致し、一帯一路の勝者となった。

 一方、ザンビアは中国の国有銀行から66億ドルを借りたが返済できず、20年に債務不履行(デフォルト)を迎えた。スリランカは債務を償還できず、ハンバントタ港の権益の80%を17年に中国に強制的に譲渡させられた。中国は「明代の鄭和がアフリカ東部まで進出した」という歴史的根拠まで挙げ、アフリカ進出の拠点として取り込んだジブチの対外債務は中国による資金投入の初期(16年)には国内総生産(GDP)の約50%だったが、2年後には85%に上昇し、財政危機に追い込まれた。70%は中国からの借金だった。バイデン米大統領は今年7月、一帯一路を「貸し剥がし事業」と批判した。

 一帯一路の明暗が分かれる中、中国指導部は10周年を機に一帯一路を次の段階に引き上げる計画だ。中国の王毅外相は今月1日、「我々は新たな出発点で高い品格の一帯一路建設を模索する準備ができている」と表明した。中国の次の目標は、一帯一路を通じて得た国際的影響力を自国の利権のために使うことだ。開発途上国のスポークスマンを自任して国際社会で声を高め(米外交専門誌「ディプロマット」)、各国に軍事基地と普及拠点を確保しながら(米民主主義防衛財団)、交通網とサプライチェーンを新たに構築し、米国に対抗するものとみられる。

北京=李伐チャン(イ・ボルチャン)特派員
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