極限境界線 救出までの18日間」

先月に引き続き、今回も韓国映画である。

ちょっとひいきし過ぎですかね。でも韓国映画好きなのよね〜。

アフガニスタンで韓国人23人がタリバンに拉致される。

タリバンの要求は収監された同胞の釈放だが、タイムリミットは24時間。

そこで韓国政府はファン・ジョンミンふんする外交通商部次官とヒョンビンふんする工作員を、タリバンとの交渉役に任命するのだが、
交渉は難航を極め、ついに人質の1人が殺されてしまうのであった。

と、まぁ、ざっくりとではありますが、このような形で物語は展開していきます。ですが、よくできていると思いました。

冒頭からいいあんばいでハラハラドキドキ感を持続させつつ、ファン・ジョンミンとヒョンビンの対照的な交渉術を軸に、
だからこそ時にぶつかりもするが、目的は拉致された人質の救出であり、気がつけば互いに自らを犠牲にして奮闘する姿は爽快でもあります。

そして改めてファン・ジョンミンという役者さんのファンになってしまいました。

おそらく彼が出演している作品は9割方観ていると思うのですが、何がいいって、たとえ正義の味方の役を演じていても、
どこか泥臭いといいますか、格好いいだけでは終わらない。それがリアリティーとなって役に厚みが出るんですよね。

だって、完璧な人間なんてそうそういないわけで、表があれば必ず裏もあり、ほとんどの人が他人には言えない、
言いたくないある種、闇のようなモノを抱えているのではないでしょうか?

そんな目に見えない人間臭さをサラッと演じてしまうファン・ジョンミンさんが悪役を演じると、これまた強烈なんです。

なかなかのエグさで、けっこうな怖さがあります。「こういう人、いそうだよね〜」って感じ。

ファン・ジョンミンさん、要チェックでございます。

ただ、わたしは本作を観ながらふと感じたことは、日本映画ももっとこういった作品を作ればいいのになと。

ちなみに「極限境界線」は2007年に実際に起きた拉致事件をベースに描かれております。

最近よくある完全なノンフィクションではないんだけれど、実話をベースに要所で脚色させていただきました的な手法なのですが、
もちろん日本映画もこの手の作品はあるにはあるんです。
ですが政治的背景を克明に描くとなるとハードルが高くなるからなのか、わたしの印象としては中途半端なモノが多い。

欧米などでは実在した政治家の名前はもちろん顔写真、映像もふんだんに使われているわけで、
批判するときは手加減なしにたたきまくっていますからね。

映画といえどジャーナリズム精神にあふれているといいますか、
それこそ表現の自由・言論の自由をうらやましいぐらいに感じるのですが、日本はな〜…。

なんでなんだろう。これもひとつの忖度(そんたく)だったり圧力だったり、日本特有の事なかれ主義のひとつだったりするのかな?

今度知り合いのプロデューサーさんに訊いておきますね。

ってことで「極限境界線」ですが、お薦めでございます!

ファン・ジョンミンさんの芝居を観るだけでも価値があるんじゃないでしょうか。

10月20日公開。
■坂上忍

夕刊フジ 2023.9/29 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20230929-MS67H7BJCJMPTP5H5DXC3NBH7E/