・日本に行けば「稼げる」時代は終わった
ー中略ー

 しかし、筆者は最近、在日中国人で、マッサージ師の仕事をしている友人から、これらの動きとはまったく異なる方向の話を聞いた。
富裕層が大挙して日本に移住している反面、日本在住歴20〜30年のブルーカラーの人々は、
逆に、低迷する日本での生活に見切りをつけ、日本よりは発展性のある中国に本格的に帰国しようとしている、という話だ。
ー中略ー

・日本人や日本社会と隔絶している
 筆者の友人の場合は、この先、たとえ発展性がなくても、日本が好きで、慣れ親しんだ日本で静かに生活したいと考え、
都内に中古のマンションを購入。日本に骨を埋めるつもりだという。

 しかし、マッサージという肉体労働の仕事の大変さや老後の不安もあり、友人はその人が下した人生の決断に、
わが身を振り返り、深く考えさせられたそうだ。

 筆者もその話を聞いて、その人にとって、日本での働き詰めの30年間は一体何だったのだろうか、と考えさせられた。
日本に住んでいても、日本人や日本社会と隔絶して暮らしているという点では、最近来日している富裕層と共通している。

 30年前に来日した彼らは、お金も稼いだかもしれないが、労働者として日本の経済を支えたのに、
日本人と深く交流する時間も、日本のよさを知る機会もほとんどなかった。

 いま、富裕層は日本のタワマンを買い、日本に生活の拠点を設けているが、彼らが関わり合うのは日本人ではなく、
言葉が通じる在日中国人だけだ。そのことに一抹の寂しさを覚えた。

 そして、改めて感じたのは、いま日中が置かれている立場の逆転だ。

 先日、別件で取材した中華料理店のオーナーによると、ここ数年、中国から調理師を採用することが非常に難しくなっているという。
東京都内の中華料理店は、以前から日本で働いていた中国人調理師をスカウトする以外に、
中国からわざわざ招聘する場合もあるが、昨今は日本の調理師と中国の調理師の給料の差がほとんどなくなってきているため、
日本に来たがらない調理師が増えているそうだ。

 日本でもそうだが、中国でも人気調理師となれば、有名店からスカウトされ、引き抜かれることもある。
腕がよければ、2万元(約40万円)以上の給料をもらえることもある。
そのため、言葉がわからず、生活習慣が違う日本までわざわざ来る必要はないと考えて、二の足を踏む人が増えているのだと聞いた。

 つまり、中国人ブルーワーカーにとってでさえ、「日本に行けば、お金を稼げる」という時代は完全に終わりを告げ、
むしろ、日本から出ていく人がこれから増えるかもしれないということだ。

 もちろん、それはいまに始まったことではなく、2010年に日中のGDPが逆転した頃からじわじわと始まっていたのかもしれない。
2022年には中国のGDPは日本の4倍になっているのだから、当たり前といえば当たり前の話だろう。
何を今更、と思われるだろうが、筆者はこのマッサージ師の話を聞いて、改めて、この30年間で、
すっかり立場は入れ替わったのだということを思い知らされた。
そして、多くの日本人が知らない間に、この国で苦労し、年齢を重ねた彼らが、ついに日本での生活に見切りをつけ始めたということに、
筆者は少なからずショックを受けた。
中島 恵(ジャーナリスト)

全文はソースから
9/29(金) 8:03配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/0b1ad706909625e25aad84e6170e3dbbe92b5ea7