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■停滞する韓国映画の現住所

 2023年の韓国映画の興行収入の半期の結果をめぐり、韓国映画の危機説が再点火している。ほんの数年前でさえ、韓国映画の地位はワールドクラスを論じた段階だった。映画『パラサイト』のアカデミー賞受賞や、ネットフリックスのオリジナルシリーズ『イカゲーム』の世界的なヒットなど、映画界には笑いが絶えなかった。そのように常勝疾走していた韓国映画は、2023年に入ると苦戦をまぬかれなくなっている。2023年上半期の韓国映画のシェアは34.9%で、前年同期比で14.9ポイント減少した。これは、5月末に公開された映画『犯罪都市3』が2023年に初めて観客1000万人を動員したことによって、それなりに挽回した数値だ。5月まで30%を下回るシェアを示していたが、これはコロナ禍の期間を除くと2004年以降では歴代最低記録だ。

 韓国映画危機論の最大の原因として、オンライン動画サービス(OTT)の浮上に伴う映画鑑賞文化の変化や、映画チケットの値上げが論じられる。事実、韓国映画危機論は、一部の大作映画の興行の惨敗が生じるたびに論じられる映画界の常連メニューだ。今回も同じ流れではないかと考えられるが、業界の人々が感じる今回の危機は、尋常ではないようにみえる。

 最大の要因は劇場を訪れる観客にみられる。劇場経験がまったく違う世代が主な消費世代として浮上したのだ。それによって、劇場映画に対して優先される消費価値が、コンテンツの内容よりも映画館で得られる空間的な経験の価値に左右される傾向を示すようになった。上半期の韓国の興行収入を強打した日本アニメの興行も、そうした新しい観客心理に触発されて生じたことがきっかけだった。

 2023年3月に公開された新海誠監督のアニメ映画『すずめの戸締まり』は観客500万人を突破し、これまで韓国で公開された日本映画としては最高の興行作品になった。新海監督の前回の作品の『君の名は。』が高い興行成績を記録したため、次回作に対する期待からある程度の成功は予想されていたが、観客500万人突破という新記録を打ち立てると予想した人はそれほど多くなかった。事実上、韓国映画が最悪の成績表を得ている間、2023年初めに公開された『THE FIRST SLAM DUNK』を合わせれば、日本アニメの興行だけで観客1000万人を超えたわけだ。

 日本アニメ映画の興行成績は、韓国映画が現在直面している限界をそのまま示している。なぜ韓国の観客は、韓国映画の代わりに日本アニメを選択したのだろうか。多くの理由があるだろうが、2つの映画はともに「映画館でみたい映画」という共通点を持っている。『THE FIRST SLAM DUNK』の迫力感あふれるバスケットの試合シーンと『すずめの戸締まり』の新海監督特有の映像美は、携帯電話やTV画面では満足できない。2023年8月に公開されたクリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』が相対的に高価なIMAX映画館で先に売り切れた現象だけをみても理解できる。観客はすでに映画館でみる映画と見ない映画を区別し始めた。映画館でみる映画の最大の選択条件は、まさにTVやモバイル画面以上の視覚と聴覚的な快感だ。

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 韓国映画が変化することなくこのまま突き進むのであれば、その未来は明らかだ。遠くを探す必要もない。まさに日本映画界だ。かつてはアジア映画の盟主を自任して世界的な影響力を誇った日本映画界は、現在は自ら没落したと評すほど力を発揮できないでいる。背景を探ると、大型企画会社中心のキャスティングや、ありきたりな内容、冒険を恐れて人気原作とキャスティングにだけ依存する旧態依然さが、観客を日本映画から遠ざけてしまった。

 これまで韓国映画界は、多くの危機に直面した。そのたびに新たな挑戦が成功を収め、その成功が韓国映画界を危機から救いだし成長させた。私たちは、その成長が無料で得られたものではないことを知っている。ゴールデンタイムは常にすぐにやって来る。絶え間なく観客のために新しさを追求したジョルジュ・メリエスとともに変化し、さらに変化しなければ、数年後の韓国映画界は、寂しく過去の光栄だけを懐かしむ日本映画界の姿になるかもしれない。

ムン・ドンヨル|コンテンツ産業コラムニスト
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/48019.html