中国が今年7月、東シナ海の日本の排他的経済水域(EEZ)内に、
日本の同意なく勝手に「海上ブイ」を設置したと報道されている。
夕刊フジが、大型外航貨物船の現役船長や、元海上保安庁幹部に取材した記事を読んだが、
「周辺海域は船舶の往来も多く、事故のリスクもある」そうだ。

国連海洋法条約の関連規定では、EEZに「海上ブイ」などの構築物を設置したり、規制したりする権利は、
沿岸国にのみ認められる。他国は、たとえ科学的調査のためであるとしても、沿岸国の「同意」がなければ構築物を設置できない。

松野博一官房長官は先月19日の記者会見で、「海上保安庁がブイの設置を確認後の7月15日、
船舶の安全確保のため『航行警報』を出した」と説明した。
さらに、日本の「同意」がない中国のブイの設置は、国連海洋法条約に違反するとして、
外交ルートを通じて「中国側に抗議をするとともに、ブイの即時撤去を申し入れた」と述べた。

フィリピンが南シナ海・スカボロー礁に中国が無断で設置した浮遊障壁を撤去したように、日本にも同様の措置を促す声もある。

しかし、沿岸国がどのように原状回復を図ることができるか条約に明文の規定はなく、確立した国際慣習もない。
フィリピンと中国の言い分は異なるが、浮遊障壁の撤去はスカボロー礁から12カイリ内で行われており、EEZではない。

東シナ海の日本のEEZ内へのブイの設置は、2013、16、18年にも中国によって行われているとの報道もある。
かつて中国の温家宝首相は「東シナ海は平和、友好、協力の海にしたい」と述べた。
「今もこの言葉は反故(ほご)にされたわけではない」と中国の要人は語る。
ならば、それにふさわしい行動を模索すべきではないか。

今月5日、参院徳島・高知選挙区補選が告示された。
10日告示の衆院長崎4区補選とともに、事実上「与野党対決」が見込まれ、岸田文雄政権への「中間評価」となる。

永田町では、岸田首相が20日召集の臨時国会中に、衆院解散に踏み切るのではとの見方が消えていない。

これまで岸田内閣の支持率は低迷し、内閣改造効果も乏しかったが、新たに指示を出した「総合経済対策」の柱立てと、
月末までの取りまとめ方針が、衆参補選にどう影響するか注目したい。
地方に持続的賃上げや成長を実現し、インバウンド拡大を含む観光立国や、農林水産品の輸出拡大などの取り組みを通じて、
経済回復の波及を図る具体策を訴えて有権者の関心を引き付けたい。

衆院解散の判断は、首相の専権事項だ。岸田首相は経済対策を取りまとめたら、補正予算の編成を指示し、
臨時国会に提出して成立を図る方針を打ち出している。

補選の結果や、国会での閣僚答弁、既定の外交日程、例年の来年度税制・予算の編成など
判断に影響する所与の要素をにらみながら、10月で折り返す衆院任期と向き合うことになる。
 (公明党代表・山口那津男)

2023.10/11 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20231011-7YYGXU5ANNIWBEQBFMRQ6ED6VI/