エロもグロもナンセンスもマンガだからで許された
社会派からギャグの大家に転身した人も

漫画が歴史を変えた特異なケースとして
田川水泡先生の「のらくろ」がある
孤独な野良犬の子が国民の義務として兵役に行って仲間とともに成長して社会に旅立つ2年くらいの物語を想定した作者の意図に反して高評価とカネに目が眩んだ講談社はのらくろが陸軍大将になるまではと連載を強要する
華族でもないのに陸軍大将に出世するにはありえないほどの大手柄を連発する必要に迫られストーリーはたちまち行き詰まる
編集者は朝日や毎日の従軍記者の書いた誇張された新聞記事をネタにアシスタントを急かせて連載を続けているとそのうち毎回コテンパンにやられる豚軍が中国国民党軍であることは疑う余地なく明白になってくる
当時の日本には日本をアジアの盟主として親近感を持って日本に留学しているたくさんの中国人留学生がいたので、当然彼らの目に止まり
日本人は大東亜共栄圏などと大層なことを言っているが、我々を騙して食ってしまおうというのが本音なのだということが日中両国で視覚的に広まってしまう
こうなるとどんなに誠意を尽くしても宣伝を強化しても無駄となり世界大戦に突入しても中国にいる兵を動かせないという絶望的な状態を招いてしまう
陸軍に取り入ろうとした講談社はかえって陸軍をとんでもない困難に追い込むこととなり、結果陸軍からの要請でのらくろが大将になる前に連載を終了させられることになるのである