ー前略ー
・控えめだが信頼される「日本の援助」
中国は、習近平国家主席が主導する経済構想「一帯一路」を通じて途上国への影響力を行使してきた
(同時に、中国は「懐が深く折り目正しいグローバルリーダー」であるという印象を演出しようとしてきた)。

たとえば中国は東南アジア地域にとって最大の援助国であり、全体の5分の1に当たる年間約55億ドルの開発援助資金を拠出している。

その一方で、日本および韓国との熾烈な争いにしのぎを削ってもいる。
中国がインフラ事業に強いのに対し、日本は運輸事業でわずかに上回る資金を提供している。韓国は通信分野で中国と肩を並べる。
中国はエネルギー分野では他を圧倒しているが、水・衛生分野の融資はゼロに近い。

中国の援助が地元で大きな反発を招くこともある。当初の予定より実施するプロジェクトを減らし、中国企業や労働者を利用することが多く、
地元の雇用促進や人材育成を重視していないからだ。

中国の2大政策銀行から資金供与を受けると、非譲許的な金利(商業ベースの金利)を満額支払わねばならないことにも
途上国は不満を感じている。汚職や手抜き工事が目立つこともある。
債務不履行に陥る国・地域も多く、スリランカ、モルディブ、ラオスは中国への返済に行き詰まっている。
中国の融資には透明性が欠けていることも不安を煽る。

ゆえに途上国は中国以外の選択肢を歓迎する傾向にあり、なかでも日本を好む。日本の援助は控えめだが、その歴史は長い。
日本が援助を本格化させたのは1950年代で、戦時中の侵略行為に対する償いの意味もあった。

日本は資金やモノを提供するだけでなく、人材育成を主軸とした援助を実施している点が評価されている。
中国とは異なり、日本は現地の建設業者と協力することが多い。

インドネシアの首都ジャカルタやフィリピンの首都マニラでおこなわれたような最新の地下鉄システムの導入プロジェクトでは、
運営方法に関する技術教育がインフラ建設とセットで実施される。

国際協力機構(JICA)で東南アジア部長を務める早川友歩は、プロジェクトの完了までには10年を費やすことも珍しくないため、
政策変更などの影響を受けない持続的な取り組みが必要だと語る。

インドとバングラデシュにとって、日本は最大の二国間援助国だ。ある東南アジアの外交官によると、
日本はフィリピンで中国との激しい競争に勝つため、開発援助プロジェクトで発生する面倒な仕事をすべて自国で請け負っているという。

韓国の援助は日本と似ている。輸出大国でもある韓国は再投資可能なドルを大量に保有し、
インフラ、鉱業、通信などの分野で同国の援助戦略をサポートする一流企業を数多く抱えている。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、自国を世界10大援助国のひとつにするために援助支出を急激に増やしている。

近年、日韓関係も改善の兆しが見え、援助の連携に関する話し合いも増えた。
太平洋島しょ国への主要援助国で、東南アジア進出に熱心なオーストラリアも志を同じくするパートナー国との協力に意欲的だ。

日韓豪は、財務的な知見や人材育成、再生可能エネルギーなどの分野でお互いの専門性を補完し合えるはずだ。
だが、シンガポールの南洋理工大学で国際関係学を研究する古賀慶准教授は予算編成など、連携するうえでの課題は大きいと指摘する。
民間セクターを巻き込むために安全で魅力的な提案をできるかどうかが鍵を握るという。

アジア太平洋の国・地域は透明性や汚職の撲滅、法の支配の遵守、シーレーン(海上交通路)の安全などを重視する。
こうした理念は、国際ルールをないがしろにし、領土・領海の広大な領有権を主張する中国に対抗するため、
米国主導で結成された「自由で開かれたインド太平洋戦略」が掲げるものでもある。
ー後略ー

全文はソースから
COURRIER 11/5(日) 10:30配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/7bd0e55ea2c070a044c1d33b7824e32938fc5c08