リニア中央新幹線をめぐり、岸田文雄首相は6日、途中駅が設置される神奈川、山梨、長野、岐阜の4知事と官邸で会談した。
2027年の東京・品川―名古屋の開業が難しい状況で、知事からは岸田首相には「開業時期の見通しをつけてほしい」
と要望する声が出た。内閣支持率が低迷するなか、反対姿勢を貫く静岡県の川勝平太知事を岸田首相が説得できれば、
政権浮揚のきっかけの一つになるかもしれない。

岸田首相は6日、早期開業に向け「われわれも努力していきたいが、皆さんも関係自治体に働きかけ、
協力してもらうことにお力添えをいただきたい」と4知事に語った。
4知事は首相に対し、リニアの駅を中心とした地域活性化に対する支援を要望。
岐阜県の古田肇知事は、開業時期について「ぜひ見通しをつけていただきたい」と求めた。

リニアをめぐっては静岡県(工区8・9キロ)の反対を受け、27年の東京・品川―名古屋間の先行開業や、
37年を目指す大阪延伸の見通しは立っていない。

静岡県は、トンネル掘削工事による大井川の流量減少対策や生態系保護などを反対理由に掲げている。
JR東海側は対応策を打ち出しているが、膠着(こうちゃく)状態だ。
川勝知事は先月10日の記者会見で、JR側との議論について「1合目よりは少し進んだが、入り口との感覚を持っている」と語った。

国交省は、リニアの全線開業後、静岡県内の駅に停車する東海道新幹線の本数を1・5倍に増やす余地が生まれ、
10年間で1679億円の経済波及効果があるとの試算を公表したが、川勝氏は「内容がお粗末であきれている」
と批判的姿勢を貫いた。

リニアの経済効果は約16兆8000億円(50年間便益)との試算もある。

経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「リニアは次世代の技術で、実用化すれば輸出産業への成長も見込まれ、国益になる。
中国も次世代のリニア開発に力を入れるが、開業の遅れは間接的に中国に有利にもなりかねない。
川勝氏はいろいろ論点を挙げているが、遅らせることが目的化しているようにもみえる。
支持率回復に寄与するかどうかを問わず、首相が国益のために取り組むべき重要な課題だ」と指摘した。

2023.11/7 11:35
https://www.zakzak.co.jp/article/20231107-ZWKOFFAVKJPWJADC3VK4QNSUUY/