<ミャンマーで少数民族武装勢力と国軍の衝突が起きているが、現場は中国との国境付近で、一帯一路のルート上にあある>
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ミャンマー北東部の中国との国境付近で起きている武力衝突は、中国政府がこの地域で進めている
数十億ドル規模のインフラプロジェクト「一帯一路」や、両国間を通る主要な貿易ルートを危険にさらす可能性があると、
専門家が本誌に語った。

<動画>ミャンマー少数民族が連携して一帯一路の拠点を攻撃
https://youtu.be/durDbK8bsT0

2021年2月のクーデターで政権を掌握して以来、民主化要求を弾圧し続けてきたミ
ン・アウン・フライン国家行政評議会副議長率いる軍事政権と少数民族武装勢力「MNDAA(ミャンマー民族民主同盟軍)」が
衝突したのを受け、中国は農融外務次官補をミャンマーに派遣して鎮静化を呼びかけた。

軍政に打撃を与えたのは、MNDAAが中国雲南省と国境を接する東部シャン州北部の国境の町チンシュエホーを制圧したことだ。
この町は中国からミャンマーを貫きベンガル湾に出る18億ドル相当の重要な貿易ルートの一部になっている。

報道によると、10月27日以来、反政府勢力はミャンマー国軍の前哨基地90以上を制圧。
軍は少なくとも3つの町を失ったことを認めたという。

国連によると、ミン・アウン・フラインは反政府勢力に立ち向かうことを誓い、国軍は空爆で応戦している。
衝突によりこの地域では約4万8000人が避難を余儀なくされた。

一帯一路構想への悪影響

ペンシルベニア大学バックネル校の朱志群教授(政治学・国際関係学)は、
「反政府勢力と軍事政権の戦闘は、中国にとって深刻な問題となっている」と本誌に語った。

中国は通常、他国の内政や内戦に関与したがらないが、
「この地域には雲南省とベンガル湾を結ぶ中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)が設置される予定であり、
ここでの戦闘は間違いなくミャンマーと東南アジアにおける一帯一路実現の支障になる」からだ。

一帯一路構想は10年間で1兆ドル規模の国際インフラ建設計画で、
古代中国と遠方の地域を結んだシルクロードおよび海のシルクロードの交易網の現代版として中国政府が売り込んでいる。

「雲南省の国境沿いの環境が不安定になっていることは、中国国境地帯の発展にも悪影響を及ぼすだろう」と朱は言う。
紛争から逃れるために難民が中国国境の町に入れば、人道的危機が生じる可能性も高くなる。

ただし「中国が内戦に直接関与する気配はないし、
国境の安定をすぐに回復するようミャンマー政府に圧力をかける以外のことをする兆候もない」と彼は言う。

・無視できないほど深刻
中国とミャンマー軍政との関係はクーデター以降、緊張をはらんだものになっている。
農外務次官補はミャンマー訪問後、国境を安定させるために「中国と協力」するようミャンマーに呼びかけた。

「軍事政権が国境の安定を確保するために具体的な措置をとるか、それとも中国がそれをやるか、どちらかだ」と、
超党派のシンクタンク民主主義防衛財団民のクレイグ・シングルトン上級中国研究員は言う。

彼は民族自決を求める反政府勢力が中国にとって二重の課題となっていると指摘。それは「中国の一党支配に対するリスク」だと語った。
また、「不安定な事態が拡大すれば、この地域での一帯一路構想への投資が危うくなる可能性もある」。

「総合すると、これらのリスクは、中国政府にとって無視できないほど深刻だ」と、シングルトンは述べた。
ブレンダン・コール

Newsweek 11/9(木) 19:58配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/c137959c927d1e5df1f03507e74f30f0768802dd