拙著『江戸幕府の北方防衛』(ハート出版)が発売された直後、ロシアがウクライナ侵略を始めた(昨年2月24日)。
このため、本書は注目を集め、アマゾンのベストセラー1位(分野別)となり、現在3刷りとなっている。

執筆動機の1つ目は、北海道の郷土資料館や博物館の歴史年表で、
江戸時代の蝦夷地(現北海道)が「アイヌ時代」となっていることに気が付いたことである。
蝦夷地の歴史から、江戸幕府と松前藩などがすっぽりと抜けている北海道の時代年表を素直におかしいと思ったのである。

なぜなら、江戸幕府や松前藩、東北6藩(仙台藩、秋田藩、庄内藩、南部藩、津軽藩、会津藩)による、
「北方防衛の事実」を知っていたからである。

私は、北海道内にある、史跡・松前城や、江差町郷土資料館、江戸幕府がロシア、諸外国から2度、
蝦夷地・樺太・千島を守るために直轄にしたときの政庁史跡・五稜郭内の復元箱館奉行所、警備していた仙台藩白老元陣屋跡、
秋田藩増毛元陣屋跡、庄内藩ハママシケ元陣屋跡、南部藩室蘭陣屋跡、津軽藩斜里陣屋跡、
野付半島会津藩士北方防衛顕彰碑などを訪ね歩いていた。

執筆動機の2つ目は、あたかも「江戸時代の蝦夷地が日本ではない」ことを刷り込むかのように、
文科省の教科書検定によって、東京書籍小6『新しい社会歴史編』の教科書が修正されたとの報道があったからだ。

2019(令和元)年4月13日の産経新聞は、
「来年度から使用される小学校の教科書で、江戸時代初期の日本を赤く塗った地図が文科省の検定により、
北海道以北を白くする修正が行われた結果、北方領土を固有の領土とする政府見解と
矛盾しかねない内容になっていることが13日分かった」と報じていた。

この報道は、検定委員に、日本から北海道を分断しようとする勢力を背景にした者が就任している可能性が推測された。

https://www.sankei.com/resizer/90XYTCktXuQD5WRz5YH7-AA1a90=/0x224/smart/filters:quality(70)/cloudfront-ap-northeast-1.images.arcpublishing.com/sankei/LTAQEAGN2BPUBCPTN3UE5S3WVE.jpg
中村氏の著書『江戸幕府の北方防衛』

今のままでは、蝦夷地を統治していた江戸幕府や松前藩、分治警備した東北6藩のことは忘れ去られ、
蝦夷地に江戸時代がなかったかのようにされると思った。
「江戸幕府の北方防衛」の事実を広く国民に知ってもらうことにより、江戸時代の蝦夷地・樺太・千島が日本の領土であることを、
日本人の共有知識とすべきであると強く感じた。

だが、歴史学者や政治家、官僚の動きはない。「誰もやらないのであれば私がやろう」と、決然と実行することにし、この本を上梓した。
■中村恵子

2023.11/14 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20231114-GJ37DHKRVVLWBOUEFEDJOIMUVU/