ー前略ー
中国が大きくその姿を変えたのは、一度目の北京五輪(夏季・2008年)と二度目の北京五輪(冬季・2022年)の間だった。
夏季五輪の開会式にはジョージ・W・ブッシュ米大統領、韓国の李明博大統領、日本の福田康夫首相ら100人余の世界のVIPが集まり、
米中協調の時代を印象づけた。14年後の冬季五輪開会式では、韓国は閣僚を送ったものの、
日本は橋本聖子参院議員という立法府からの参加になり、米国は政府代表団の派遣を見送った。
冬季五輪の開会式に先立ち、習近平氏はロシアのプーチン大統領と首脳会談を行い、両国の蜜月ぶりを演出した。
日本の専門家は「中国がパートナーを米国からロシアに切り替えた、象徴的な瞬間だった」と語る。

新型コロナウイルスが流行したこともあり、日中の対話チャンネルはほとんど封鎖に近い状態になった。
ようやく、コロナの感染拡大が収まった今も、チャンネルはもとに戻っていない。

関係者の1人によれば、北京の日本大使館が外務省本省に送る政務関係の電報が激減したという。
中国が7月、「反スパイ法」を改正したこともあり、北京で本音を語ってくれる人は姿を消した。
別の関係者は「コロナの感染が拡大する前の2019年ごろまでは、少ないながら、本音を語ってくれる中国人もいた」と語る。
気心が知れた相手と1対1になり、閉ざされた空間で会えば、習氏の悪口を漏らす場面にも出会えたという。
「今はとてもじゃないが、そんな会話はできない。自分たちは外交特権で守られているからまだ良いが、
相手の中国人にどんな災厄がふりかかるかわからない」

・対話再開に向けた手を打ってきたが…
日本は苦しみながら、今年初めから対話再開に向けた手を打ってきた。2月、米本土での中国偵察気球撃墜事件が起きるなか、
日本は中国が提案した安保対話の開催を受け入れた。5月には日中防衛当局間ホットラインの開設にもこぎつけた。

日本政府は当時、徐々に対話を増やしたうえで、岸田首相の訪中実現を模索していたという。
関係者の1人は当時、「(2020年春にコロナを理由に延期されている)習近平氏の国賓訪問は消えていないが、
国内世論を考えた場合にハードルが高すぎる。まずは、首相訪中を実現したい」と語っていた。
少なくとも、日中外交当局間ではこの方針が共有されていたという。

しかし、今年8月に南アフリカで開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議後、この動きは一時全面ストップした。
関係者の1人は「おそらく、中国外交部が上げた提案を、習近平氏が拒否したのだろう」と語る。

習氏は保健衛生や国家安全保障を強調していたため、福島第1原子力発電所から出た処理水の海洋放出に強く反応したとみられた。
そればかりか、中国は日本産水産物の全面禁輸を発表。
永田町では「外務省は事前に情報を把握できなかったのか」という非難の声が渦巻いた。
外務省も情報収集をしたくても、手も足も出ないという状況だったのだろう。

さらに、中国では今年に入り、秦剛外相と李尚福国防相が相次ぎ、行方不明になったあげく、解任されるという騒ぎが起きた。
習近平氏が指導する中国はもともと、法の支配が弱かったが、習氏が自ら承認した人事すらひっくり返される事態が起き、
中国高官たちは我が身を守ることで汲々としている。
韓国の専門家たちは、忠誠心競争で必死になる中国人たちを「中国の北朝鮮化」という言葉で揶揄している。

米国も中国との間で対話と協議のチャンネルを増やす努力をしている。しかし、それは何らかの合意を得る目的があるからではなく、
偶発的な衝突が全面戦争に発展しないようにする保険としての意味しかない。逆に言えば、
米中はいつ、偶発的な衝突が起きてもおかしくない状態に陥っているとも言える。
ー後略ー
牧野 愛博

全文はソースから
11/26(日) 8:30配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2b5d31419c876af646cbd60cfb4307ff2cb7b8bf?page=1