ー前略ー
・ずさんな政権運営と硬直した体質
 中央日報によれば、崔泰源氏は博覧会誘致のために中南米・欧州7ヵ国を視察した後、尹大統領のパリ訪問に合流した。
サムスン電子の李在鎔会長、現代自動車グループの鄭義宣会長、LGの具光謨会長らも相次いでパリに入ったという。
政界関係筋の1人は投票直前、「これほど大事にしてしまった以上、釜山誘致に失敗すれば、誰かが責任を取らなければいけなくなる。
責任追及をかわすため、最後まで頑張ったという姿勢を示したいのだろう」と語っていた。

 万博誘致合戦に敗れ去った今、尹錫悦政権に浮かび上がったのは、無理な戦略を立てたずさんな政権運営と、
途中で修正が効かない硬直した体質だった。尹大統領の「こうと決めたら、テコでも動かない」という性格が大いに成功したのは、
日韓関係の改善と米韓関係の強化だけにとどまっている。万博の問題だけにとどまるのであればまだしも、
野党陣営を敵視するばかりで対話を欠きがちな硬直した姿勢は、中間層・浮動層の支持を得られない最大の原因になっている。

 また、今回の万博誘致では、財界に過度に頼る保守政権の伝統的な体質が浮き彫りになった。
財閥企業は朴槿恵政権当時、平昌冬季五輪への招致を巡り、政財界の癒着があったとして強い非難にさらされた。
李在鎔氏も懲役2年6カ月の判決を受け、一時服役した。
「もう、政治との関わりはこりごり」(サムスン関係者)とし、サムスン、SK、現代自動車、LGの4財閥系列企業は相次ぎ、
全国経済人連合会(全経連)から脱退した。

・住宅ローン問題は悪化の一途
 ところが、尹政権になり、保守政権のお家芸といえる、財界頼みの姿勢に転換。尹氏は今年3月の訪日など、
外遊のたびに財界人を大挙して引き連れ、活発な経済外交を展開した。4財閥系列企業も今年8月、全経連に相次いで復帰した。
釜山万博招致を巡る、財界の活発な支援活動も、こうした経緯を踏まえて行われた。

 もちろん、その結果、韓国の人々が今、一番関心を寄せている住宅ローンなどの家計負債問題が好転すれば良いものの、
事態は逆に悪化の一途をたどっている。

 韓国銀行が11月21日に発表した「第3四半期の家計負債(暫定値)」によれば、9月末時点での韓国の家計負債の残高は
1875兆6000億ウォン(約214兆円)。史上最高額だった昨年9月末の1871兆1000億ウォンを上回る最悪の結果になった。
野党・進歩陣営が政治的に利用して「大企業優遇政策ばかりで、庶民の負担軽減を軽んじている」と
尹政権を攻撃するのは目に見えている。場合によっては、朴槿恵政権の時と同じような、
「政財界癒着糾弾キャンペーン」が再び起こらないとも限らない。

 現在の政治状況から、来春の総選挙で与党・国民の力が議会過半数を得ることはもちろん、比較第1党になるのも相当難しい状況だ。
場合によっては、「釜山万博の招致失敗」が、政権発足2年目にして早々に始まるレームダックの号砲になる可能性もある。

 日本の岸田文雄政権は日韓関係改善を大いに喜び、尹政権に全幅の信頼を寄せている。
同時に進歩勢力にはほとんど目を向けず、日本に招待する韓国関係者の圧倒的多数が保守勢力で占められているのが現状だ。

 ところが、韓国政治の今の雰囲気は「次の大統領選での進歩勢力の復活」に向かって流れている。

 尹政権になって、「解決した」と安心している日韓徴用工問題でも、原告の一部は、韓国政府による代位弁済の受け取りを
拒み続けている。韓国司法は、韓国政府による代位弁済金の供託を認めない判決を出し続けており、
このままいけば、いずれ、「日本被告企業の韓国資産の現金化」が復活することになる。
韓国司法は政治状況に影響されてきた過去があるため、尹政権が力を失えば、再び、現金化の流れが強まりかねない。
日韓の蜜月は予想以上に早く終わるかもしれない。
牧野 愛博(朝日新聞外交専門記者)

全文はソースから
現代ビジネス 12/3(日) 8:03配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/8842998ccbc4ca6ab1e4c6e7598c964e4bbe4962