米ネットフリックスは12日、配信している作品の99%について視聴者データを初めて公開した。

今年上半期に最も視聴されたのは、政治スリラードラマ「ナイト・エージェント」で、8億1210万時間視聴されていた。

ネットフリックスはかねて、プラットフォーム上のコンテンツの動向などについて、透明性がないと批判されてきた。

こうした批判は、数カ月にわたった米俳優労組のストでも議論の中心となった。

俳優労組「映画俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」は、7月14日にストを開始。
映画スタジオやストリーミング各社に対し、賃金やロイヤルティー、年金といった労働条件の改善や、
人工知能(AI)の使用に関する保護措置などを求めた。

118日におよぶストは11月8日に終了し、ストリーミング配信された映画やドラマシリーズが成功した場合の、
俳優へのボーナス支払いなどで合意している。

ネットフリックスのテッド・サランドス共同最高経営責任者(CEO)は記者会見で、作品の動向について透明性が欠けていたことが、
クリエイター業界内で不信を招いていたと認めた。

そのうえで、同社は潜在的な競合他社に重要な情報を与えることなく実験ができるよう、
事業構築中は視聴者データを非公開にしていたと説明した。

ネットフリックスはブログで、「今回の動きはネットフリックスと業界にとって大きな一歩だ」と述べた。

「この報告書の視聴情報が(中略)クリエイターと我々の業界に、我々の視聴者や、視聴者の心に響くものについて、
より深い洞察を与えてくれると信じている」

米ハリウッドのクリエイターらは、伝統的なテレビ放送やケーブルテレビについて、
データ企業ニールセンが毎年公表している視聴者データを参考にしている。

今回公表された報告書では、1万8000件の作品を、今年1〜6月に視聴された時間でランク付けした。
ネットフリックスは今後、この報告書を6カ月ごとに発表するとしている。

全体の視聴時間は1000億時間近くに上る。2位は米コメディードラマ「ジニー&ジョージア」のシーズン2の6億6510万時間、
3位は韓国のスリラードラマ「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐(ふくしゅう)〜」の6億2280万時間だった。
これに、映画「アダムス・ファミリー」のスピンオフドラマ「ウェンズデー」(5億770万時間)、
時代劇ドラマ「ブリジャートン家」のスピンオフ作品「クイーン・シャーロット」(5億300万時間)と近年の話題作が続いた。

また、「フレンズ」や「オフィス」といった人気ドラマシリーズも上位にランクインしている。
映画で最も視聴時間が長かったのは、ジェニファー・ロペス氏主演の「ザ・マザー」だった。

報告書によると、全視聴時間のう3分の1が、非英語作品だった。また、過去作もなお需要があること示された。

ネットフリックスは、「このプラットフォームでの成功にはさまざまな形があり、視聴時間だけで決まるものではない。
視聴時間が短いものにも、長いものにも、大成功した映画やテレビ番組はある。
すべては、映画やテレビ番組が視聴者を熱狂させるかどうか、そして作品の経済性に対する視聴者の規模にかかっている」と説明している。

ネットフリックスは動画配信サービスとしては世界最大手で、2億5000万人のユーザーを抱えている。

2021年からは、週間トップ10と歴代人気作品のリストを公開。同社によると、今年公開された作品の半分以上が、
週間トップ10に入ったという。

今回の報告書では、ネットフリックスの視聴時間の55%がオリジナル作品から、45%がライセンス作品から来ていると、
サランドス共同CEOは語っている。

ネットフリックスは昨年、広告付きの別サービスを開始した。広告主はコンテンツの人気に関する情報を求めているため、
より透明性が求められている。

BBC 2023年12月13日
https://www.bbc.com/japanese/67700297