11月23日、韓国の元慰安婦女性ら16人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、ソウル高裁は日本政府に
元慰安婦1人当たり2億ウォン(約2300万円)の賠償金の支払いを命じた。
2015年12月の日韓合意により、「最終的かつ不可逆的」に解決されたはずの問題は、その後も何度も政治的議題として取り上げられ、
その度に日韓関係が揺らいだ。慰安婦問題は日本からすれば徴用工問題と同じく、外交的には解決した問題で、
既に韓国の国内問題である。

さらに昨年5月に成立した尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、日韓関係の改善に注力しており、政治・外交的な視点から見れば、
同問題を蒸し返さないというのが両国の暗黙の了解になりつつあるようだ。
そのため今回のソウル高裁の判決は、政治的な配慮の結果というよりは、法解釈によるものといってよいだろう。

今回の争点となったのは、主権国家は他国の裁判権に属さないとされる「主権免除」の問題である。
最近では国家の商業行為の一部や非人道行為について、他国の裁判所であっても、その管轄権になるという学説もあるが、
わが国は基本的にはこれまでの国際的慣習にのっとって主権免除の方針を貫いている。
そのため今回の判例は、この慣習に一石を投じるものとなった。

各紙はこのような韓国側の判断を大きく報じており、産経、読売、毎日は25日の社説において、反発の語気を強めた。
東京も遅れて社説で論じているが、「両政府は対話を重ねるべき」としてややトーンダウンした反応であり、朝日と日経はこの問題について
社説では特に論じていない。

ただ日本が過去、中韓との歴史認識問題で劣勢に追い込まれたのは、「歴史問題だから」という理由で最初から反論を行わなかったために、
いつの間にか中韓の言い分が広まってしまったためだ。
過去の教訓から学ぶのであれば、今回の一件については、日本政府も各紙も自らの言い分をきちんと主張すべきなのである。
主権免除が国際的慣習となっており、日本政府としてはそれを踏襲しているので、今回、あえて韓国側の判決に異を唱えません、
という大人の姿勢だけでは、いつか足をすくわれることになる。

今回は上川陽子外相が韓国の朴振(パクチン)外相と会談し、いち早く日本側の懸念を伝え、韓国側も理解を示した。
日韓関係が修復されつつある中、今回の件が両国間での躓(つまず)きの石にならないか懸念されたが、
上川外相は言うべきことは言ったという印象だ。今後、新聞各紙にもこのような姿勢を貫いてもらいたい。

【プロフィル】小谷賢
こたに・けん 昭和48年、京都市生まれ。京都大大学院博士課程修了(学術博士)。
専門は英国政治外交史、インテリジェンス研究。著書に『日本インテリジェンス史』など。

2023/12/17 10:00
https://www.sankei.com/article/20231217-NSMTRC56SZP7TD7SDPU65Z5BDU/

※関連スレ
【週刊金曜日】 元「慰安婦」ら逆転勝訴 韓国高裁、日本の主権免除は認められないと判断★2 [12/13] [Ikhtiandr★]
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1702473371/
【国際】社説「慰安婦訴訟、日本が歩みよらなければ真の解決を見ない。問われているのは人権に対する認識だ」★4 [仮面ウニダー★]
https://lavender.5ch.net/test/read.cgi/news4plus/1700936012/