9月30日、早期退職優遇制度を利用して、NHKを定年退職。

「これまで自分の中にためてきたパワーを全方向出力マックスします」
ー中略ー

NHK時代の忘れられない仕事の1つは、2003年大みそかの「紅白歌合戦」の総合司会。

「新しい集計システムを取り入れたんです。リハーサルまではうまくいったのに、本番でぶっ壊れまして。
400対1万みたいなあり得ない数字が出てきて。そしたら、スタッフがブワーッと集まって、『巻け』だの『引っ張れ』だのと違う指示。
その瞬間、これまでの経験が走馬灯のように頭に流れてきて…」

いったん呼吸を整え、ずっと一緒にやってきた女性のフロアディレクターだけを信じようと腹を決めた。
すると、スーッと冷静になれ、そのときシステムが直った。

「で、『蛍の光』が流れて、皆さまどうぞよい年をお迎えくださいとなって、紙ふぶきなどの特殊効果のパーンから『ゆく年くる年』の除夜の鐘のゴーン…」

こんな究極の体験をした4日後、7歳年上の文化人類学者(現在は東京工業大学副学長)の夫・上田紀行さんとタイの海辺にいた。
ホテルの窓を開けたとき、夫から「よくやったね」と声を掛けられた。

「その瞬間、体じゅうがピリピリして、涙が止まらなくなって。夫も涙もろいので2人で泣きました。
アナウンサーとして走り続けて、初めて緊張が解けたのかもしれません」

長く不妊治療をしていたが、その数カ月後、長女を授かった。その後、夫の米国留学を経て、女子の双子を出産。

「子供たちが小学生と中学生のころ、突然首から上が火照ったり、何でもないことにイライラしたり。更年期の症状ですね。
娘たちも『ママ、怒ってばっかり』と言い出して」

番組で出会った専門家から「怒りの温度計」という考えを教わった。
ゼロから10まである「怒りの目盛り」のどの数値なのかを相手に伝えれば、意思疎通がうまくいくという。

「怒りの温度計をシェアすると、『いまのママの怒りのレベルはいくつ?』と言いながら、子供たちが支えてくれるようになって。
家族にやさしい言葉をかけられると、気持ちも緩んでラクになりました」

この経験を昨年の「クローズアップ現代~更年期障害でアナウンサーを辞めようと思った日」やNHKスペシャル「みんなの更年期」で生かし、
多くの反響を得た。

「『つらくなったら、これを食べよう』『あの歌を思い出そう』というようにハッピーになれるものを持っておくと怒りを少し延ばせます。
気に入ったものがそばにあるだけで落ち着きました。私の場合は、子供たちのメッセージが書かれた手帳。
そして大好きな韓国の7人組ヒップホップグループ『BTS』メンバーの缶バッジキーホルダーをつけた筆箱。見ているだけで元気が出てきます」

5年前からARMY(BTSファンの総称)。きっかけは、中学生になった長女が動画ばかり見ていて、
虎穴に入らずんば虎子を得ずということで、一緒に見ていたら、ドはまりした。新型コロナ禍前は日本でのコンサートに欠かさず参加。

「更年期で辛かったとき、いつも(東京の)渋谷駅からNHKまでの間、
彼らの『Attack on Bangtan/進撃の防弾』を聴きながら歩いてました。NHKに着いたころには元気になっていましたね」

推しのメンバーJIMINが何を語っているのか知りたくて、韓国語を勉強。暇があると韓国の空気を感じたくて新大久保通い。
1人ランチしたり、韓国食材スーパーに寄ったり。

「山手線の4号車3番ドアから乗ると、新大久保駅で目の前に階段があるんです。
もし歌手デビューするようなことがあったら、タイトルは『新大久保4号車3番ドア』と決めています」

最後に2024年の抱負を。

「武内陶子第二章は迫力とすごみで勝負したい。当たって砕けても自分の責任です。ロックが過ぎる武内陶子で攻めたいですね」
■武内陶子
2023.12/21 11:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20231221-72F2KGF76RNMZBGHX7JN5C3IFM/