・日本と韓国の「新たな問題」
 日本と韓国の共通点といえば、何より「少子化大国」であることが挙げられる。

 そうした中で、最近韓国では、2024年に韓国に入国する外国人労働者数が16万5000人との見通しが発表され、注目を集めている。
これは今年よりも40%増えるうえ、過去最多となるという。

 日本でも、コンビニ、ファストフード店、スーパー、飲食店などで外国人労働者の姿を見ることは当たり前の光景になってきたが、
同じように韓国でも外国人労働者が増え続けているわけだ。

 一方、韓国でも外国人労働者が増えていることは確かだが、
表立ったサービス業の現場で外国人労働者の姿はあまり見かけないのが実情である。

 求人アプリで外国人応募可能な求人案件を見ると、その多くは工場や倉庫での作業、飲食店での調理補助や皿洗い、
デリバリー代行や清掃といったものがほとんどで、接客での募集は少ないのが特徴である。

 そうした意味で、韓国では外国人労働者の増加が著しい反面、日本と比較すると外国人労働者の姿を目にする機会が少なく、
「外国人が多い」という実感があまり感じられないこともある。

・「結婚」「移住」「離婚」「再婚」…
 もちろん、外国人の採用にあたっては韓国語能力の問題などもあるため、
韓国語能力がそこまで必要とされない単純作業や肉体労働的なものに求人が集中しているともいえる。

 しかし、こうした事情を抜きにしても、韓国ではまだまだ外国人に対する先入観や偏見が根強いこともあり、
それ故に、韓国の若者が敬遠するような求人で外国人が求められ、それに頼らざるを得ないのは何とも皮肉な現状であるといえる。

 また、韓国では、海外から労働者として入国する外国人ばかりでなく、
韓国人配偶者との結婚にともない韓国に移住する「結婚移民者」も多いのが特徴である。
特に、中国を初め、ベトナムやカンボジアなど東南アジアの女性が多くを占めている。

 そして、このように韓国に在留資格を得て長期する外国人が韓国籍に帰化する人も増加している。特に興味深いのは、
結婚移民者として韓国に移住し、帰化した人が、韓国人の配偶者と離婚、
祖国のパートナーと再婚するというケースがここ数年で増えているというのだ。

・「複雑化」した問題
 今年3月に「韓国人女性とベトナム人男性の国際結婚が増加」という法務部の発表が大きな注目を集めた。
ただし、これにはある事情が隠されている。
それは、韓国人男性との結婚で韓国に移住、韓国籍に帰化したベトナム人女性が、韓国人の夫と離婚の後、
ベトナム人男性と再婚するという事例が数多く含まれているためという。

 結婚移民者の永住権取得や帰化は5年以上韓国に居住していることが基本条件とされてきたが、
今年から3年以上と居住期間が短縮されたことや、若者の非婚化が進む中で、国際結婚による「多文化家庭」の増加から
今後同じようなケースがさらに増えるのではないかと思われる。

 筆者も外国人の1人として韓国に暮らす立場として、日本や韓国で外国人が増加することへの不安や不満の声を聞くと
正直複雑な心境になるが、やはり、外国人の滞在資格の審査が簡素化されてしまうことには危惧を感じている。

 そして、韓国も日本も少子化についても今に始まった問題ではなく、既に数十年前から少子高齢化社会になることがわかっていながら
具体的な対策が行われてこなかったことが何よりの背景にある。ここからさらに複雑化した問題が噴出してくることは間違いないだろう。
田中 美蘭(ライター)

現代ビジネス 12/23(土) 7:33配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/b7427351f1d3a2d077cfa2b5568e3f13660749f4