第74回NHK紅白歌合戦の視聴率が過去最低となった。
性加害問題で旧ジャニーズのタレントが不在となった影響も少なくないと見る向きは多い。
 代わりに、紅白歌合戦に「侵攻」してきたかのような印象を与えたのがK-POPだ。
このK-POPのグローバル市場を見据えた進化が加速している。
 BLACKSWANという女性グループではK-POP初の黒人メンバーが注目を集め、韓国出身者はゼロ。
旧ジャニーズの性加害問題を契機に、日本の音楽産業はK-POPのようなグローバル目線を手に入れられるか。
 (平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
ー中略ー

■ K-POP躍進の背景にネット戦略
 紅白の出場者がどうなるかは毎年秋になると取りざたされる。
2023年の場合は、旧ジャニーズ勢が抜けた穴にK-POPが入り込むだろうという報道が盛んにされていた。

 結局、2022年は3組の出場だったK-POPは、11月13日の正式発表の段階で過去最多の紅組・白組でそれぞれ3組の出場が決まっていた。
そして12月半ばには、まだ日本デビューの日取りすら決まっていないNew Jeansの参加が公表された。
これまでのK-POPにない、みずみずしく輝くようなスタイルで新風を吹き込み、2023年の全米チャートで1位を記録した、
まだ10代ばかりのガールズグループだ。

 さすがにこうした状況には「K-POPが多すぎる」という意見も飛び出した。まるでK-POPが日本歌謡界を侵攻しているかのようだ。

 しかし、私はそれでもいいと思う。旧ジャニーズの手法は、パフォーマンスのレベルはそれほど高くなくとも、
とにかくメディアで露出を増やしファンクラブやコンサート、楽曲の販売などあの手この手で莫大な収益に結びつけるというものだが、
世界を席巻し始めたK-POPと比べると、もはや限界とも言える状況だったからだ。

 韓国では官民を挙げて音楽産業の振興に取り組んできた。その手法の一つが、
YouTubeなどをつかったネット配信をメインに据えたことだ。世界中で、誰もが無料で動画を視聴できるようにした。
金大中(キムデジュン)政権時代から継続して、国策としてネット環境を整備してきたからこそ実現できた戦略だ。
しかもそれは、不要の外出が制限されたコロナ禍で一気に花開いた。
世界のリスナーがK-POPを視聴する機会が大きく広がったのである。

 だが、飛躍の要因はネット配信だけではない。そもそも、「コンテンツ」が最初から世界を意識して作り込まれている。

■ K-POP初の黒人アイドル
 メンバーの出身地を見ると、その狙いが一目瞭然だ。K-POPのメンバーはJ-POPよりもグローバルになっている。
K-POPはもはや、グループのメンバーを「韓国人」に限定していないどころか、育成の場も韓国にこだわっていない。
国籍や民族にかかわらず、グローバルなマーケットで受け入れられそうな人材を登用している。

 まずは日本市場を狙い、全員日本人で日本でデビューさせたNiziUはその代表格だ。
NiziUのメンバーは日本人だが育成環境はK-POPで、その狙いは所属事務所JYPエンターテインメント代表のパク・ジニョンが
言うように、さらに大きなマーケットでK-POPの「価値を立証する」ことにあった。
韓国でのヒットはそれほど重要ではなく、日本→韓国→世界という挑戦を見据えている。

 そして、K-POPはさらに進化している。BLACKSWANという女性グループのメンバーの出身地は、ベルギー(セネガル)、アメリカ、
ブラジル、インドと多彩だ。モデルとして活動していたセネガル生まれ、ベルギー育ちのファトゥは、K-POP初の黒人アイドルである。

 日本の歌謡界にも外国出身の歌手はいるし、日本人でない人もいる。
だが、これだけ多国籍のアイドルグループが果たしていただろうか。

全文はソースから
1/12(金) 11:02配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/4fe94c8bd521f0488939d3a83873091a39afae32