ー前略ー
「情報保全のさらなる強化を図る必要がある」

岸田首相は30日、関係閣僚による経済安全保障推進会議で、SC制度の法制化を急ぐよう、こう指示した。

高市氏も同日の記者会見で、「関連法案の通常国会への提出に向けて準備を急ぎ、必要な検討を進めていく」と語った。

SC制度は、国が経済安保上の機密・機微情報を指定。国家公務員や研究者、企業の従業員の犯罪歴や飲酒の節度、家族・同居者の国籍などを調べ、機密情報を扱う認証を与える。機密性の高い情報を漏らした場合、罰則を科す。外交や防衛、テロとスパイ活動の防止といった分野を対象とする特定秘密保護法の「産業技術版」とされる。

G7では、日本だけが導入していない。米国と英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国は、SC制度を導入して、機密情報を共有する枠組み「ファイブ・アイズ」を構成している。

SC制度を導入しないと、日本企業が国際的なビジネスや共同開発を行う際に不利な立場に置かれる。国際的には、SC制度に基づく情報管理体制が「先端技術開発などへの参入条件」となっているのだ。

高市氏は「SC制度がないため、日本企業が海外の政府調達や海外企業との取引に参加できないケースがある」と課題を指摘していた。

制度の確立は、国の命運を左右する。

経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「現代の先端技術は、軍事用と民生用の区別がない軍民両用(デュアルユース)だ。半導体などは米中はもちろん、韓国、台湾など各国が開発で熾烈(しれつ)な競争を繰り広げている。日本が国際優位を獲得し、経済大国として復権するには、国をあげた技術開発とともに、技術へのアクセスを制限して守る制度が不可欠だ」と語る。

政府は、既存の特定秘密保護法で扱わない経済安保上の重要情報を、新制度で保全対象にする方針だ。また、既存法と一体運用するため「(同法の)運用基準の見直しの検討を含め、必要な措置」を取るよう求めている。そのうえで2月下旬にも、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案(仮称)」を国会に提出する方針だ。

ただ、反対論もある。

左派勢力などが、「国民の知る権利やプライバシー権の侵害」「特定秘密保護の拡大」などと批判しているのだ。

これに対し、前出の平井氏は「SC制度は国家の安全保障上、当然の基準を示している。身体検査は強制ではなく、国家の機微情報に接する民間人や公務員が対象だ。『全体への強制調査だ』とする意図的なミスリードもある。『普通』に生活する国民への不利益は想定しづらく、反対する理由はないはずだ。高市氏にはぜひ、早急な法制化を進めてほしい。国民は与野党を含め、賛否の状況がどうなるか、しっかりと注視すべきだろう」と強調する。

SCをはじめとする安保制度は、安倍元首相の悲願でもあった。

安倍氏は特定秘密保護法を成立させた2013年12月、夕刊フジの単独インタビューに応じ、次のように語った。

「世界各国では、国家秘密の指定と解除、保全などには明確なルールがある」「各国と安全保障や外交、テロなどの情報を交換するにあたって、情報保全の法律整備は不可欠だった」「どの国とは言えないが、情報機関のトップが『日本にNSC(国家安全保障会議)ができ、秘密保全の法律ができて、情報の提供はよりスムーズになる』とハッキリ言っていた。法律に加えて、信頼関係があって、国民を守るための情報交換・情報収集はうまくいく」

まさに、SC制度は「安倍氏の宿題」といえる。高市氏は〝遺志〟を継ぎ、SC法制化を実現できるのか。正念場を迎えている。

2024.1/31 15:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20240131-FWRP2ICD4FP6BCDQDZQJGP63A4/