米国へ不法に渡る中国人が昨年から激増している。南部国境で1年間に拘束された中国人は過去最多を大幅に更新。
カリフォルニア州では不法入国者の3割以上を中国人が占める国境地帯もある。
習近平体制の強権支配への反発や経済困窮が背景にあり、50日を超える長旅の果てに国境を越えた一家は
「自由が欲しかった」と打ち明けた。

1月下旬、カリフォルニア州ハクンバホットスプリングスとメキシコの国境地帯。
不法入国をあっせんして手数料を取る闇のあっせん業者「コヨーテ」の車数台から約120人が姿を現した。

車内ですし詰めになっていたのか、台数に対して人数がかなり多い。
「国境の壁」の切れ目から有刺鉄線をくぐり抜けて米国入りすると、歓声を上げて抱き合った。アジア系の姿も目立つ。

移民は壁沿いに1キロほど歩かされた後、ワゴン車などで入管施設にピストン輸送されていた。
亡命申請などを経て解放され、それぞれの目的地に向かうとみられる。

移民を支援するサム・シュルツさん(69)によると、昨年9月ごろからこの地域で不法移民が増え始め、
12月下旬には1日で約450人がたどり着いた。平均で約3割が中国人だという。

2023会計年度(22年10月~23年9月)にメキシコ国境で当局に拘束された中国人は2万4314人。
データがある07年度以降で最多だった16年度を10倍以上更新した。
その後も増え続け、昨年12月だけで6000人近くに上った。

中国人移民希望者を顧客とする中国系米国人の黄笑生弁護士によると、多くは自由や職を求めて米国を目指すという。

山東省出身の30代女性、張さんは夫と10歳前後の長女の3人で米国境を越えた。
数カ国を経由し、入国にビザが不要なエクアドルに入った後、主に陸路で北上した。
中国国内向けの動画投稿アプリ「抖音」で米国入りルートを知った。
多くの移民が命を落としたコロンビアとパナマにまたがるジャングルも通った。

危険を覚悟で米国を目指したのは、習指導部が思想統制に用いる「愛国教育」を長女に受けさせたくなかったからだ。
集中隔離などの強制措置で新型コロナウイルス感染拡大を抑え込む「ゼロコロナ」政策により「多大な経済的影響」を
受けたことも拍車をかけた。

祖国の親族や友人にはもう会えないが「きっと決断を理解してくれる」と張さん。
米国に足を踏み入れ、頭に浮かんだのは「自由の2文字だ」と語った。 (共同)

2024.2/16 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20240216-OODU5UECY5NWHEE22TJ4WONYGI/