ー前略ー
派閥のパーティー収入不記載事件を受けて、自民党は独自に行ったアンケートや、関与した議員への聞き取り結果を公開した。
ただ、質問は2問のみで、「裏金の経緯と使い道」も聞かない中途半端さもあり、世論の反応は極めて悪い。

こうしたなか、岸田首相は局面打開のためにも、「国民の信」を問うタイミングを見計らっているとされる。

永田町で浮上する主な候補は、①2024年度予算が3月に通過した後②4月に予定される国賓待遇で招かれた訪米の前後
③6月23日の通常国会会期末―の3つだ。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、大義を得られる「国会会期末」が最有力だと分析し、次のように解説する。

「いまの内閣や自民党の支持率では、とても解散できない。岸田首相としては、訪米などの外交成果を積み上げたうえで、
自身が打ち上げた『賃上げ』『所得税・住民税減税』などの効果が世論に浸透するのを待つ。
最大のポイントは内閣不信任案だ。野党が『政治とカネ』の問題などで会期末に提出するのは確実だろう。
内閣不信任案を受けて立つという『解散の大義』を得て伝家の宝刀を抜く。
岸田首相が考える上がり目が重なるタイミングは、ここしかない」

・有馬氏「突然思い立ち、実行する可能性はある」
「大義」を待つのではなく「奇襲」を狙うとの見方もある。

政治評論家の有馬晴海氏は「どのみち厳しい選挙だ。支持率は下がり切り、好転は難しい。
一方で批判票の受け皿となる立憲民主党や日本維新の会が単独過半数を取る勢いはなく、政策の違いから連立の可能性も低い。
自民党の議席が大幅減でも政権が維持されるなら、続投の目が出てくる。4月28日の衆院補選前後、
6月の国会会期末などの候補があるが、岸田首相が『奇襲』的に決断を下す可能性は常にある」と語る。

確かに、岸田首相は就任以来、たびたび〝解散風〟を吹かせては自ら収束させる言動を繰り返してきた。
「同じ発想で、突然解散を思い立ち、実行する可能性はある」(自民党中堅)というのだ。

ただ。岸田首相を取り巻く政治環境は日に日に悪化している。

昨年12月、東京地検特捜部による事件捜査が本格化すると、岸田首相は慣例に反して首相就任後も会長を続投していた宏池会
(岸田派)を突然離脱した。今年1月に岸田派の「裏金」が表面化すると「派閥解消」を表明した。
主流派として政権を支えた麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長に根回しはなく、激しい怒りを招いた。

・岸田首相は衆院解散でもハプニングを起こす恐れ
有馬氏は「岸田首相と麻生氏、茂木氏の結束は大きく揺らいだ。党内で岸田首相への反発は強まっている。
いまや衆院選よりも、総裁選に勝つ方がはるかに難易度が高くなった」と語る。

鈴木氏も「4月の衆院補選も『負け戦』が前提で、肝心の候補が決まらない。
地方組織を含めて『岸田首相では戦えない』との認識は一致している。
『ポスト岸田』の動きは静かに、着実に広がっている」と明かす。

岸田首相が政権浮揚のため、「外交で成果を狙う」との見方がある。
電撃的な「日朝首脳会談実現」や、4月の「国賓待遇訪米でのサプライズ」などが注目されるが、前のめりを懸念する声は根強い。

鈴木氏は「日朝首脳会談の可能性が取り沙汰されているが、北朝鮮は『拉致問題は解決済み』と主張しており、
戦略がないまま会談するのは極めて危険だ。日中関係も結局、前進していない。4月の訪米での議会演説は注目を集めるだろう。
ただ、ジョー・バイデン大統領は11月に大統領選を控えており、安易に国際公約を表明するリスクも感じる。
岸田首相は『LGBT法』『異次元の少子化対策』など、急転換や思い付きで決断してきた。
根回しがなく、場当たり的な政権運営が続いてきただけに、内政・外交だけではなく、
衆院解散でもハプニングを起こす恐れはある」と危惧している。

2024.2/18 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20240218-BZG4RVEXRVMAHEZ6K25QU5NIZI/