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『越境の在日朝鮮人作家 尹紫遠の日記が伝えること 国籍なき日々の記録から難民の時代の生をたどって』(琥珀書房)

1946年夏、朝鮮から日本への「密航」を経験し、戦後は混乱の中、「洗濯屋」としてどうにか東京で暮らしをつむぎながら
作品を残した尹紫遠(ユン・ジャウォン:1911-1964)という在日朝鮮人作家がいました。
これまでごくわずかに知られるだけだったこの作家について、2022-2024年にかけて4冊の本が刊行されました。
1冊目が本稿で紹介する弊社・琥珀書房が刊行した尹紫遠の日記。在日1世の日記としては初めての公刊でした。
2冊目と3冊目は尹の残した作品(自伝的歌集『月陰山』と『未刊行作品選集』※いずれも弊社刊)。
そして4冊目が2024年1月に刊行された、日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」
初となる書籍化企画、『密航のち洗濯』(柏書房)。
なぜいま、尹紫遠なのか?日記を発端とした、100年の出版リレーをご紹介します。

◆尹紫遠と約75年前の「密航」の時代
「難民」や「密航」という言葉を目にして、何を思い浮かべるでしょうか。50年ほど前になる、
ベトナム戦争に関わるインドシナ難民、ヨーロッパをめぐるニュースでよく耳にする、地中海を決死の覚悟で渡る人々、
直近では、ウクライナの戦禍、そしてガザでの虐殺を逃れる人々。
ただ一方で、日本が直接の舞台となった「難民の時代」とも言える時代がおよそ70年前に、
日本の敗戦をきっかけとして存在したことは、すぐには浮かばないかもしれません。
直接経験をした世代は極めて少なくなり、誰もそのことを積極的に話したいとも思わなかったからです。
しかし、この70年前の「難民の時代」こそ、今からご紹介する尹紫遠の最大の創作テーマでした(その時代は、
近年でも収容者の方の死亡事件が起きてニュースになっている大村入国管理センターの前身がつくられた時代でもあります)。

今から80年前に「大東亜共栄圏」という名の下、朝鮮・台湾・満州・樺太・千島・南洋群島に数多くの
「帝国臣民」を日本が従えていた記憶も、体験世代はほぼ鬼籍になったこともあり、社会の中で希薄化し、揺らいでいます
(本稿執筆中(2024年1月)も「群馬の森」の朝鮮人追悼碑の行政代執行による撤去が報道されています)。
そして、他ならぬ尹紫遠自身が、真珠湾攻撃から約1年後に「大東亜共栄圏」におけるある種の模範的テキストという一面を
有している「朝鮮人初の短歌集」である『月陰山』(タルウムサン)と名付けられた短歌集を刊行していました。

尹紫遠の人生
ー中略ー

ここで、『密航のち洗濯』に寄せられた、翻訳家の斎藤真理子さんの推薦文もご紹介します。
ー中略ー

植民地・警察・戦争・占領・移動・国籍・戸籍・収容・病・貧困・労働・福祉・ジェンダー・「書くこと」・・・
『密航のち洗濯』には、今日に直接つながる様々なテーマを含みながら、とても読みやすく、
「この複雑な、だが決して例外的ではなかった5人の家族が、この国で生きてきた」(『密航のち洗濯』帯文)ことを
伝えてくれています。
版元として、『密航のち洗濯』を読んでくださった方が、尹紫遠が記したテキストそのものに関心をお持ちいただき、
琥珀書房から刊行した尹紫遠の「日記」(『越境の在日朝鮮人作家 尹紫遠の日記が伝えること』)や
『尹紫遠未刊行作品選集』にまで手を伸ばしていただければ、これに勝る喜びはありません。
ー後略ー

全文はソースから
ALL REVIEWS 2/23(金) 6:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/2216521ddf4ffa0d8fc44c681b2ade1e6278611c