2/24(土) 21:57配信 EE Times Japan

TSMC 創業者のMorris Chang氏

 TSMCの製造子会社であるJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(以下、JASM)は2024年2月24日、熊本県菊陽町で建設を進めてきた熊本第一工場の開所式を開催した。開所式にはTSMC創業者のMorris Chang氏、会長のMark Liu氏、CEO(最高経営責任者)のC.C. Wei氏、経済産業大臣の齋藤健氏、熊本県知事の蒲島郁夫氏らが出席したほか、岸田文雄首相もビデオメッセージを寄せ、熊本第一工場に対する期待を語った。

 開所式にはソニーセミコンダクタソリューションズの社長兼CEOである清水照士氏、デンソー 社長の林新之助氏、トヨタ自動車 会長の豊田章夫氏ら、JASMに出資する企業からの出席者なども参加し、テープカットを行った。

 Chang氏はTexas Instruments(以下、TI)で副社長を務めていた当時、初めて日本を訪れた際のエピソードを披露した。「日本TIの鳩ケ谷工場(埼玉県)を立ち上げる際、ソニーグループ創業者の盛田昭夫氏からは『日本の工場の歩留まりの高さに驚くだろう』と言われ、その通りになった」という。熊本第一工場の開所について、「JASMの成果にも期待している。日本や世界の半導体供給のレジリエンス強化につながるものだ。日本における半導体製造のルネサンス(再興)の始まりになることを信じている」と強調した。

 JASM熊本第一工場の敷地面積は21万3000m2、延べ床面積は22万6000m2で、地上4階、地下2階建て。投資総額は86億米ドル(約1兆2900億円)で、日本政府が4760億円を助成する。TSMCの製品ラインアップのうち、22/28nm世代品、12/16nm品を生産するとしていて、量産開始時期は2024年内を予定している。
熊本工場は「日本の半導体産業に欠けていたピース」

 Chang氏はさらに、今後の需要増についても「最近、TSMC社内のAI担当者から、AIの登場で必要になった(半導体チップの)生産能力を聞いて驚いた。ウエハーを何千枚、何万枚というレベルではなく、ファブがいくつ必要かというレベルで話していた」と明かした。

 岸田首相はビデオメッセージで、「日本政府は先端半導体の国内製造基盤の整備に向け、前例のない大胆な支援を講じてきた。JASMで先端ロジック半導体が生産されることが、日本の半導体産業とユーザー産業の双方にとって大きな一歩だ」と語り、「TSMCの熊本進出発表後、約50社が熊本への設備投資を発表している。今後もJASM、熊本、九州から投資と賃上げの好循環が生み出されることを歓迎する」と、経済効果の大きさに言及した。

 斎藤氏は、「1980年代、日本の半導体産業は世界一のシェアを誇っていたが、官民双方の取り組みが時代の流れに取り残され、競争力を落としてきた」と振り返った。「現在、日本では40nm未満のロジック半導体は量産されていない」と指摘し、熊本第一工場では22/28nm品、12/16nm品を生産することから、「日本の半導体産業に欠けていたピースが埋まる、極めて深い意義を持つものだ」と期待を寄せた。

 なお、TSMCは2024年2月6日、ソニーセミコンダクタソリューションズやデンソー、トヨタ自動車とともに、熊本第二工場の建設計画を発表した。第二工場についても日本政府が助成を行うと明らかにしている。第二工場は、2024年末までの建設開始と、2027年末までの稼働開始を目指す。第一工場と第二工場の合計月間生産能力は、300mmウエハー換算で10万枚以上となる見込みで、自動車や産業機器、民生機器、HPC(高性能コンピューティング)向けに40nm、22/28nm、12/16nm、6/7nmプロセスでの製造を行う予定だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/68fe7fdc9c54be364ba98f517fa550849342ffbf