苦難の帰郷

中国の動画サイトに「只有中国才有的一場苦難(中国だけにある苦難)」と題する動画が掲載された。動画は清潔そうな印象のうら若い女性が雪の残る田舎道を歩きながら「春運」について語ったものであったが、その詩のような旋律は何故か心に残るものだった。

なお、「春運」とは春節前の帰省ラッシュと春節後のUターンラッシュを指す。

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◆中国だけにある苦難◆

世界で我々だけにある春運 故郷を離れている人が多いから 春運がある。

春運は帰郷という幸せを意味するものではなく 移動という苦難である。

動物の移動は水や草と繁殖のためだが

労働者の移動は家族を養い糊口を凌(しの)ぐためである。

数億人の農民工やサラリーマンが通り抜けねばならないのは

苦難と辛酸が充満した旅程である。

仕事がある所に家はなく  家がある所に仕事はない

よその土地は先祖の霊魂を収容できないし 故郷は肉体を収容できない

家と呼べる所では家族を養う方法がみつからないし

どうにか家族を養える場所をみつけても そこには家がない

そのため人々は流浪するようになった だからこそ春運があるのだ。

「春節」という旧暦の新年を祝う行事に参加するため帰郷の往復を意味する「春運」が苦難に満ちたものだとは驚き以外の何物ではないが、故郷を遠く離れて働く人が多いことを考えると致し方ないことなのかもしれない。

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どう見てもあり得ない官製やらせ報道

2月9日の「除夕(大晦日)」に中国の官製メディアやネット工作隊は「湖北省の高速道路が全面開通」とか「湖北省は奇跡を創造」と大々的に報じ、あたかも大雪による湖北省内の高速道路の渋滞が全面的に解消したかの如く伝えた。しかし、それは常套手段の嘘ニュースであり、湖北省内の高速道路では依然として各所で渋滞が解消しておらず、多くの人々が寒さに耐えながら春節を車内で迎えようとしていたのだった。

中国の国営ニュース放送チャンネル「CGTV」は2月6日付で「雪のため高速道路で立ち往生した車に住民が食事を届ける」という湖北省のニュースを報じた。同ニュースによれば、湖北省仙桃市では2月4日地元住民が吊り籠を使い、同省武漢市と広東省広州市を結ぶ「湖広高速道路」で雪のために立ち往生した車に無償の八宝粥(多種の食材で作るおかゆ)やインスタントラーメンなどを届けたが、相手から値段を聞かれると「以前湖北省が困った時に助けてもらったので、無料です」と答えたという。さらに、現地では住民が自発的な行動を取るのと同時に当局も積極的に除雪や融雪を行い、車両がスムーズに通行できるようにしていると報じたのだった。

日本のテレビ各社はこのCGTVのニュースをこぞって報じていたが、中国事情をよく知る人たちは誰もがこのニュースをやらせであると判断したはずである。高速道路上で車が雪で大渋滞となったと聞けば、多数の周辺住民が金儲けのチャンス到来とばかり、食料や飲料を持って高速道路に入り込んで高値で販売することは想像に難くないが、無料で飲食物を配布することなどは、共産党や政府の命令がなければあり得ないのではなかろうか。

湖北省政府は高速道路上で行われた除雪の動画をニュースとして放映した。その画面には雪に覆われた高速道路上に6人のライトグリーンの制服を着た男性職員が整列し、各人がその手に持った雪かきスコップ(スノープッシャー)を使って同じ姿勢で一糸乱れず雪かきをしている情景をドローンが上空から撮影した映像が映っていた。

この映像を見た中国国民は余りのことに言葉を失ったに違いない。誰が考えても、高速道路の除雪をたった6人の職員が各自手にした雪かきスコップだけで行うとは呆れて物が言えないのではなかろうか。多くのネットユーザーがこの動画を意味のない恰好付けの宣伝映像だとして一笑に付すと同時に、小手先のパフォーマンスで除雪の実施を大衆に知らしめようとするさもしいやり口に憤りを感じたのだった。どこの世界に高速道路の除雪を雪かきスコップで行う組織があるだろうか。

全文はソースで
https://news.yahoo.co.jp/articles/67b416e43e694b4a3c29a554756c3053074330ae