先日、ソウル江南(カンナム)にある韓国料理専門店に入った。女性従業員のネームプレートをふと見ると、日本人の名前が書かれていた。会計のときに日本語で訊ねてみたところ、韓国の名門大学に通う留学生で、21歳だと教えてくれた。

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「留学生は基本的に寮に入ることができないので、学校の近くで一人暮らしです。家賃が高く、生活も苦しいから夕方バイトをするしかありません」

 10年ほど前まで、韓国でバイトをしている日本人の働き先といえば、日本料理店や日本風の居酒屋など「日本人」であることに価値のある店ぐらいだった。そもそも円に比べてウォンが安く、働くメリットが小さかったので、韓国に働きに来る人も少なかった。留学生の場合は、あらかじめ留学費や生活費を日本で準備してから来るケースがほとんどで、生活費が足りなければ日本から送金してもらえばよかった。頑張ってバイトをする理由などなかったのだ。

 ところが、最近はバイトする若い日本人をソウルのあちこちで見かけるようになった。韓国料理専門店の彼女がいうように、韓国の物価が上昇し、円安ウォン高の状態が続いているせいだ。

日本人留学生の苦境
 韓国の日刊紙「ソウル新聞」は、昨年末に「円安が日本人留学生を直撃、翻訳バイトと生活必需品空輸」と報じた(2023年12月7日)。記事のなかでは、日本人留学生が生活の苦しさを語っている。
〈「両親から5万円程度を毎月仕送りしてもらっていますが、あまりの円安で家賃すら払えなくなってしまった」(大学院生、26歳)〉

〈「円安で生活費がかさんで大変。生活用品などは日本で買って韓国に持って来ている」(23歳)〉

〈「円が簡単に高くなるとは思えず、休みの日には日本語のプライベート・レッスンと通訳・翻訳のバイトをはじめた。韓国で働いてお金を稼げば、少なくとも為替リスクはないのではないか」(21歳)〉

 円安の影響で韓国留学をあきらめる日本人学生も多いという。韓国の法務部の出入国・外国人政策本部の統計によれば、韓国内に滞在中の日本人留学生は23年10月の時点で5067人と、2022年10月の5883人より約14%減少した。同じ期間に韓国にやってくる留学生の総数は19万8063人から22万5372人と13%増加しているのにもかかわらず、である。

デイリー新潮 2024年03月16日
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