「産業のコメ」経済安全保障の観点からアプローチ 
サプライチェーン再編の激変期を追撃のチャンスに

 「先端ロジック半導体が日本で生産されることは、我が国の半導体産業、ユーザー産業にとって大きな一歩だ。政府が引き続き半導体の量産などの支援策をスピーディーに実行する」

 日本の岸田文雄首相は先月24日、世界最大のファウンドリ(半導体委託生産)企業である台湾TSMCの熊本第1工場の開所式で、ビデオメッセージを通じて半導体産業の支援を強調した。同工場では今年10〜12月からカメラや自動車などに必要な12〜28ナノ(ナノメートルは10億分の1メートル)の非メモリー半導体が生産される。最先端半導体ではないが、現在日本で量産されている半導体の中で40ナノが最も性能が良いという点を考えると、画期的な変化だ。2027年の稼動を目標とするTSMC熊本第2工場では、先端半導体の6ナノが生産される予定だ。

 1980〜90年代初めまで世界の半導体製造市場の「絶対王者」だった日本は、30年間の低迷から抜け出し、巨大な復活を夢見ており、キャベツ畑の前にあるTSMC熊本第1工場はこのような日本の変化の動きを象徴する場所だ。

 日本政府は2021年6月「半導体・デジタル産業戦略」を発表した後、半導体産業を育てるために積極的に動いている。今回の戦略は半導体企業の競争力強化だけでなく「経済安全保障」の観点を重要に考えている点が特徴的だ。「産業のコメ」と呼ばれる半導体を日本で生産できる環境を作るために、過去とは異なり、日本企業でなくとも日本に生産拠点を作れば果敢な支援を行う。

 日本政府はTSMの熊本第1工場の事業費1兆1千億円のうち、約40%に当たる4760億円を補助したのに続き、今年末から工事が始まる第2工場にも約7300億円を投入する予定だ。米半導体企業のマイクロンテクノロジーの東広島工場にも最大1385億円の補助金支給を決めた。

 日本は、米中対立で始まったサプライチェーンの再編など、半導体分野の激変期を利用し、「半導体製造大国」への復帰も狙っている。トヨタやNTTなど日本を代表する主要大手企業8社が団結し、2022年11月に半導体製造会社「ラピダス」(ラテン語で「速い」という意味)を設立した。昨年9月、北海道千歳で工場建設を開始し、2025年に夢の半導体である2ナノのパイロット(試験)生産に続き、2027年頃には本格的な量産を計画している。日本政府はすでにラピダスに3300億円の補助金支給を決め、さらに5900億円を加えて計9200億円を投じる予定だ。ラピダスに参加した大手企業の出資金が73億円であることを考えると、事実上政府が主導する「国策企業」であるわけだ。

 日本も国際競争の激しい半導体製造分野で短期間に再び「大国の隊列」に合流するのは容易ではないという点を分かっている。だからこそ、日本が選んだのは同盟・友好国との協力だ。2ナノ半導体の生産に向け、ラピダスは米情報技術(IT)大手のIBMと共同研究だけでなく、技術者の育成や販売先の開拓などにも協力することにした。先月はカナダの人工知能(AI)半導体スタートアップのテンストレントと、2ナノ工程基盤のAI用半導体の共同開発と2028年量産を目標に契約を結んだ。その他、ベルギーの総合半導体研究所のIMEC、フランスの電子情報技術研究所(CEA-Leti)、オランダの半導体装備企業のASMLと緊密に協力している。

 日本の追撃は非メモリー半導体だけにとどまらない。NAND型フラッシュメモリー半導体を生産する日本のキオクシア(旧東芝メモリー)と米国のウェスタンデジタル(WD)が米日政府の全面的支援のもと合併を進めている。両社が統合されれば、この分野の市場シェア2位のSKハイニックスを抜いて1位のサムスン電子に匹敵する規模になる。

 日本経済新聞は、日本政府は半導体の国内供給網を安定的に作り、現在5%に過ぎない半導体自給率を2031年には44%まで引き上げるという考えだとして、今回を日本「半導体の復興」の最後のチャンスとみていると強調した。

東京/キム・ソヨン特派員

ハンギョレ 2024-03-19 06:31 修正:2024-03-19 08:01
https://japan.hani.co.kr/arti/economy/49476.html