17日に放送した「そこまで言って委員会NP」(読売テレビ系)に出演した。
関東では放送されていないためなじみが薄いかもしれないが、視聴率は10%を超える人気番組で、
安倍晋三元首相も出演したことがある。

筆者は普段、パネリストとして出演して時事問題を討論しているが、今回は毛色が違った。
専門家が独自につけたランキングをパネリストに1位と2位を予想してもらうクイズ企画で、筆者は出題者として参加した。

テーマは「『もしトラ』で困ること トップ5」。「もしトラ」とは、11月5日投開票の米大統領選で、
「もしも、ドナルド・トランプ前大統領が当選したら」の略語で、筆者も最近頻繁にテレビやラジオで使っている。
以下の順位を掲げてみた。

(1)「第2の『ニクソン・ショック』」

(2)「在日米軍駐留経費5倍増」

(3)「台湾有事不介入」

この「ニクソン・ショック」とは、ドル紙幣と金との兌換(だかん)停止ではなく、
1971年7月にリチャード・ニクソン大統領が中国訪問を発表した方を指す。
つまり、再選したトランプ氏が対中強硬策を急転換し、中国の習近平国家主席と「ディール(取引)」をし、
関係改善に動くことを意味する。

結果はパネリストの全員不正解。ほとんどの方が、駐留経費や台湾有事を「1位」と答えていた。
SNS上でも「1期目に対中強硬策をとったトランプ氏が、中国側と手を結ぶはずがない」というコメントもあった。

筆者自身もいずれの可能性も十分あり得ると思っている。
ただ、日本にとって「最悪」と考えるのが「米中接近シナリオ」だと考える。

確かに、トランプ氏は再選した場合、中国からの輸入製品に60%を超える関税をかけることを表明している。
中国の自動車メーカーがメキシコで生産した車についても「100%の関税を課す」と宣言している。

だが、こうした圧力は、中国への強硬策というよりは、「ディール材料」の可能性が高い、と筆者はみている。

根拠とした一例を、トランプ政権1期目で大統領補佐官を務めたジョン・ボルトン氏が回顧録で明かしている。
2019年6月、大阪での20カ国・地域首脳会議(G20)の際に開かれた米中首脳会談で、
トランプ氏は習近平国家主席にこう要請した。

「翌年に控えた大統領選で再選するため、中西部の大豆や麦を買ってもらいたい」

中西部はトランプ氏の票田だ。一方、国際社会が「人権侵害」と非難していた中国政府が新疆ウイグル自治区で進めていた
少数民族の「再教育施設」について、トランプ氏は「的確な措置であり、計画を推進すべきだ」と前向きな姿勢を示したという。

筆者は今月上旬、ワシントンに出張して、トランプ政権1期目の幹部らと意見交換を重ねた。
トランプ氏自身の対中政策を含めて、「まだ何も決まっていない」という見方で一致した。
ただ、トランプ氏が「1期目よりも自身の政策を進めようとするだろう」と口をそろえた。

いずれにしても、トランプ氏再選により、対中外交を含めて予測不可能性が高まることだけは確かなようだ。
 (キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)
峯村健司

2024.3/23 15:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20240323-MC76FGCOCBKORMFUO7HWKB4D4I/