「ニッポンの新常識」は今回、最終回を迎えた。2015年から毎週掲載で、9年間も続いた。
自分が考えたことを自由に発信できる場所だった。

コラムでは、GHQ(連合国軍総司令部)が戦後、日本に植え付けた自虐史観からの脱却を訴え続けた。
慰安婦問題など、多くの歴史問題にも言及した。憲法改正や安全保障問題、中国の覇権拡大なども取り上げた。
事実を述べて、挑戦する信念を持っていた。

連載開始当初と比べると、日本で自虐史観を見直す動きや、中国の脅威への認識が深まった印象を受ける。
本連載が一助となったとすれば、うれしい限りだ。

思い出深いコラムは多い。今後も課題となりそうな問題を取り上げた、2つの記事を紹介したい。

1つは、2017年4月に掲載した「『クレーマーに屈する日本メディア』生んだGHQ」だ。
中国や韓国に忖度(そんたく)する日本メディアの体質は、占領期にGHQに忖度したことが源流にあるのではないか、
と問題提起した。

クレームを受けてサービス改善が図られれば、自分も相手も得をする「ウィンウィン」になる。
だが、クレーマーだけが得をして、受け入れた側が損をするクレームもある。
これを「ウィン・ルーズ」と呼んで、「絶対に受け入れてはならない」と強調した。

「理不尽なクレームに屈した事実が社会正義をゆがめ、積み重なると国益を害する」場合があるのだ。

近年は、特定の著名人や団体などの主張や思想を狙い撃ちし、SNSで拡散して、メディア露出を妨害したり、
商品の不買運動に発展させる「キャンセルカルチャー」が深刻化している。

正当な言論や、冷静な反論は問題ない。SNSが普及するなか、感情論だけが独り歩きしている社会の風潮を憂いたコラムだ。

19年6月に掲載した「天安門事件30年」も印象に残っている。
中国当局は1989年、民主化を求めて天安門広場に集結した学生らを弾圧した。

あれから35年、中国の影響力が強い香港でも23日に「国家安全条例」が施行された。
2020年の香港国家安全維持法(国安法)を補完するものだ。

私は先のコラムで、《中国が世界の覇権を握れば、「自由」「人権」「平等」などの価値観は人間社会から駆逐される》と
強調した。

近年、中国の人権弾圧、覇権拡大の脅威が明らかになってきた。日本や世界で「脱中国」や、
中国との付き合い方を見直す動きも広まっている。

私は「歴史修正主義者」「日本びいき」という批判を浴びてきた。

ただ、コラムの目的はタイトル通り、自虐史観で染まった日本の方々に「新常識」を提示することにあった。
戦後、植え付けられた「常識」に対して「修正主義者」でいられたとすれば本望である。

2024年は激動の年といわれる。連載が終了するのは名残惜しいが、今後も緊急寄稿などで、夕刊フジで発信を続けていきたい。

長い間、お読みいただき、ありがとうございました。 =おわり

■ケント・ギルバート
2024.3/29 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20240329-4TR7A3CT2BPP3DKMXRS7KYBWOE/