再生可能エネルギーへの政府の取り組みについて厳しい批判が相次いでいる。
きっかけは、再エネに関する規制見直しを目指す内閣府のタスクフォース(TF)の構成員だった公益財団法人
「自然エネルギー財団」の大林ミカ事業局長が、中国国営企業のロゴ入りの資料を提出したことだ。

日本のエネルギー政策の根幹に、中国の影響が及ぶ可能性があることは、安全保障上の深刻なリスクだ。
批判を受けて大林氏はTF構成員を辞任した。また大林氏を推薦したのは、河野太郎規制改革担当相だったことも判明した。
大林氏の件をきっかけにして、政府のさまざまな政策への特定個人や組織の影響力、
あるいは安全保障上のリスクが議論されてきたのはいいことだ。

政府には多くの委員会や組織がある。
だがよく見てみると、さまざまな委員会で特定の人物やまた濃厚な利害関係をもつ代弁者たちが、
いくつもの委員を兼務していることがわかる。また政府の会合などでそのつど招かれて頻繁に発言の機会を得ている。

こういう政府へのコネは、政府に対する影響力だけでなく、その人物や組織が民間に対する「売り」にしていることが多い。

大学業界でも、政府へのコネとしてこのような委員歴を売り物にする人物がいる。「大学屋」といわれる人たちだ。
何年か前に「大学の世界を変える人物を引き合わせたい」とある議員から紹介されたことがあるが、
それは私からみると典型的な大学屋だった。
もちろんそんな大学屋は国民目線の大学改革ではなく、自分たちの既得権を拡大することに邁進(まいしん)している、
利権に群がる寄生虫のような人たちである。会うまでもなくお断りした。
だが、そんな連中は政府の委員会「業界」にはごまんといる。

政府の委員になるにはさまざまな「抜け穴」もある。委員長が権限で選ぶ委員もいる。もちろん本当に選んでいるのは官僚側である。
また一定期間を空けて繰り返し就任することで実質長期に官庁や業界に影響力を維持するケースもある。
こういった委員任命の不透明さは、与野党ともに自分たちの都合のいい人物を送りこんできたので、
なかなか改革の声が政治側からは出てこないだろう。

「セキュリティークリアランス(適格性評価)」法案が可決されても、実際の運用を見ておかないと、
官僚や政党側にも抜け穴を利用する動機付けには事欠かない。

似た事例では、日本銀行からの政策の詳細な事前漏洩(ろうえい)もある。だが政府は対応せずに放任である。
海外メディアからは「こんな情報管理だから米英などが機密情報を共有する『ファイブ・アイズ』に入れないのだ」
と痛烈に批判されている。
情けない政治風土だ。今回のTF問題を突破口に少なくとも中国の影を追い出すべきだろう。
 (上武大学教授)

2024.4/2 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20240402-DFWKAJAGIVMFLAUZZCLDM3RCFU/