さいたま市の埼玉朝鮮初中級学校には、朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちが通う。公立、私立の学校に通う子どもと大きな差はないが、埼玉県は1982年以降支給されてきた補助金を、2010年に停止した。北朝鮮の拉致問題やミサイル発射が理由とされた。

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 ▽補助金停止、子どもの学びに影

 政治的判断が学校生活に落とす影を実感している人に話を聞いた。この学校で「保健室の先生」を務める「佳音(ペ・カノン)さん(31)だ。

 「さんは日本人だが、夫は在日韓国人。ルーツを学んでほしいと思い、息子の通学先に朝鮮学校を選択した。入学手続きで学校を訪問した際、校長からこんな相談を受けた。

 「保健室で働いてくれる人を探している」

 学校は前身時代から70年以上、保健室の先生がいなかった。「さんが現役の看護師だと知っての依頼だった。

 日本で学校に通った「さんにとって、保健室の先生が不在という現実は驚きだった。少し迷ったが、依頼を受けることに。「医療知識のある大人がおらず、けがや病気の子どもが1人で寝ていると思うと居ても立ってもいられなかった」

 着任当初、保健室には古いベッドが2台あるだけでスペースの半分は物置になっていた。消毒液やばんそうこうは数点のみ。まずは机、タオル、新しい布団などを購入してもらった。

 仕事を始めてから、自らの知る学校との格差に気付かされた。朝鮮学校には給食、図書室、プールの授業がない。健康診断や保健・衛生教育も自助努力だった。

 子どもたちは保健室に来る前に傷を水で洗うことも知らなかった。この学校ではそれまで「保健室の先生がいない」ことが当たり前。学校に何が不足しているのか、気づけない状況だったことにも衝撃を受けた。

 朝鮮語がわからず苦労することもあるが、仕事にはやりがいを感じている。それだけに、経営難で設備が十分に整わないことには不安がある。

 「朝鮮語を話せる以外、子どもたちに違いはない。国は子どもたちの未来をきちんと考えてほしい」

 ▽「学校の属性に注目した差別だ」

 不支給を続ける埼玉県の姿勢には、学校外からも批判の声が上がる。埼玉県弁護士連合会は2013年、子どもの権利条約に反するとして、支給を求める会長声明を出した。15年には県に「警告」を突き付けている。

 補助金問題に取り組む「有志の会」共同代表を務めている明治学院大学の猪瀬浩平教授は県の姿勢を批判する。

 「属性だけに注目し、学校の補助金支給に差をつけることは明らかな差別だ」

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(共同通信=赤坂知美)
https://news.yahoo.co.jp/articles/0676ec25b979a77819bbfb009bf32b3222607395?page=1