エレクトロニカと付き合い始めた
ニカち〜ん、折角の休日なんだし本ばかり読んでないでお外いこうよ nika「やだ。外は雨だしヤダー。ヘミングウェイ読むのー。」 nikaの横では愛犬のポストが腹をだして横になっていた。 ステレオからはル・サージュの弾くシューマンの子供の情景がかかっていた。
昼食を創りにキッチンへ向かおうと立ち上がった時、ちょうど大好きなトロイメライが流れてきた。
ニカはそれに合わせて口笛を吹きながらキッチンへと向かった。 ブチッ プチチッ ピキーッ
キッチンから妙な音が聞こえてきて、僕は思わず体を跳ね上げたが、
すぐに気が付いた。これは彼女の口笛なのだ。
彼女と出会ったばかりの頃はこのノイズのような口笛が不快に思えたが、
今は何もかも心地よく思える。 nika「う、上手く吹けない訳じゃないもん。...フェ...フェルドマンの真似だし><」 うつむくニカの視線の先には、二つのペダルがあった。 彼女は自身の細くしなやな足でクイっと踏んだ。
「ピッ プツツー」
心地良いノイズが流れる。
nika「あ・・・ああ・・・・・・。」
周波数の心地良さについ甘い溜め息をついてしまうnika さて、昼食をつくらなくちゃ!ニカはかた焼きそばを作った。
どうかしら?この歯ごたえとバキバキした食感は?
僕は少し戸惑ったけれど、この食感というかバキバキした音が実に素晴らしいね、と僕は言った。
そして彼女は満面の笑みを浮かべながらバキバキ音を立ててかた焼きそばを平らげた。 ニカはリビングでおもむろに立ち上がると
天井に空いている10円玉大のの穴に吸い込まれていった。
ああ、もうそんな時間か。
外からは激しいフィードバックノイズが聞こえてくる。 しばらく耳の奥で鳴り止まないノイズ音に酔いしれていると
二日酔いにも似た感覚が襲ってくる。
このまどろみのまま、寝入ってしまおうか・・?と
ふと、考えたが、せっかくの休日を無駄に過ごしてはいけないと思い
僕は街へと繰り出した。
空が限りなく澄んでいた。 休日の雨上がりということもあり、街の人影はまだ薄く、時間は穏やかに流れていた。
ニカはさっき出て行ったばかりで当分戻りそうにない。
街を30分程ふらついたが、特に目当てがあった訳でもなかった。
だが、歩くにつれ新しくCDを買いたい衝動に駆られた。
僕はその足でワルシャワへと向かった。