私の名前は八坂火継。
私立に通う女子高生1年生。
今日から新学期。
がんばらなくっちゃ。
「いってきまーす」
「いってらっしゃい。気をつけるのよ」
毎朝見送ってくれるのは私の兄さん八坂炎雅。
両親が戦死してから男手ひとつで私を育ててくれてるの。
そう、あれは18年前。
私が物心つく前の出来事だった。
「ここはもうダメだ。炎雅、火継を連れてにげろ。ここは俺たちが引き受ける」
「いやだ!俺も一緒に!」
ドスッ!
父さんの拳が炎雅のみぞおちに深々と突き刺さる。
「とう…さ…ん…」
気付いた時、俺はふもとの停留所にいた。
まだ0歳の火継と一緒に。
父さんと母さんは俺たちを逃がすために犠牲になった。
いや、俺は認めねえ。
二人はきっとどこかで生きている。
ということがあったみたいなの。
でもそれはもう過去の話。
私は今日から高校1年生。
花の女子高生。
食パンをくわえたまま火継は走る。
入学式に遅れるわけにはいかないのだ。
前方に同じ制服を着た少女が目についた。
「こんにちは!私は八坂火継!あなたの名前は?」
「え…」
いきなり声をかけられてビックリする少女。
140センチ前後の小柄で、長い黒髪のポニーテールが印象的な少女だ。
「…武者小路芙美恵」
「そっか!じゃあ今日から友達だよ!じゃ!」
やった!いきなり友達ができるなんてラッキー!
おっと!急がないと遅刻しちゃう!
火継は走る。
100m4秒8、足には自信があった。
しかしその横を嘲笑うかのように走り去る少女が。
圧倒的なスピード。
自分より速く動くものを見たことがない火継にとって衝撃だった。
「なんなのよ…」
そう、これが少女達を戦いの戦場に誘う幕開けである。
そのことをまだあたしは知らなかった。
知る由もなかった。