最初に、酒井さんがゲーム業界に入ったきっかけと、これまでに手掛けられた作品についてお聞かせください。

酒井氏:
実はもともと特撮映画が好きだったので、美術大学に通っていた頃は、特撮マンになりたいと思っていたんです。大学生のときに、怪獣の人形を作ったりしていましたね。ただ、日本の特撮には限界も感じていました。
また、その頃は“ちょうどこれからはゲームが3Dになる”という時代だったんです。「ゲームだったら世界に向かって自分の作ったものを発信できるし、今後映画のような演出のあるゲームもでてくるだろう。
そして自分の立体のスキルを生かせたり、映画的な演出ができる部分もあるんじゃないか」と思って、ゲーム業界に行くことにしました。入ってみると、まさに思っていたものがここにあった、と言う感じでしたね。

特撮映画がお好きとのことですが、自分のお仕事の中で特撮映画から影響を受けたことはありますか?

酒井氏:
円谷、東宝、東映など、いろいろなスタジオの映画から多大な影響を受けていますよ。自分がモンスターをデザインするときに、よく参考にさせてもらっています。
それだけでなく、特撮映画には子ども向け作品であっても決して妥協しない姿勢、そこらのテレビドラマよりも実は深いテーマ性など、学ぶべき要素が非常に詰まっています。
特撮映画を「しょぼい」と言って観ない人は多いのですが、とてももったいないことをしているな、と思います。
また、特撮の神様・円谷英二監督はスタッフたちと打ち合わせする席で、“こういうことはできない”とは絶対に言わず、涼しい顔で“できるよ”と言ってから、それをどうやって実現するか、それこそ胃が痛くなるほど考える、
これがプロの仕事だとおっしゃったそうです。この言葉には、自分がプロとして仕事をするうえで非常に影響を受けました。常に目標にしたい言葉ですね。実際にはなかなかそうはできないのですが(苦笑)。

それでは最後に、ゲーム制作の際に心掛けていることや注意していることなどをお聞かせください。

酒井氏:
ゲームで大事なことは、その作品において一本の筋を通すことだと思います。世界観や操作方法、それらが有機的に絡んでいるゲームには、ユーザーはすんなり入ることができます。
逆にそこがバラバラだと、ユーザーが無意識に色んな齟齬を感じて、ゲームに入り込めなくなってしまうでしょう。常にどのようにプレイヤーが感じてプレイしてくれるのか、そこを意識して作るようにしています。
現在開発を進めている新作も、世界観とシステムを融合させつつ、プレイヤーを引き込んでいけるゲームにしていきたいとおもっています。