近年,いわゆる「新型うつ病」というものが,世間やマスコミをにぎわしてきており,産業保健の現場でも,「新型うつ病」の社員を
どのように処遇すべきか,多くの産業医が頭を悩ませている問題となっている.この「新型うつ病」なるものは,精神医学的に見れ
ばいわば「ゴッタ煮」であり,そこには,疾患としてのうつ病や軽度の精神病,あるいは神経症,ある種のパーソナリティ障害,適応
障害や一過性の不適応行動,さらには健常レベルでの怠業や逃避行動まで含まれており,学問的な信頼性と妥当性を有した疾患概
念ではない.だからあくまで も括弧付きのうつ病である.それは,いわば現代日本の時代精神を反映した一種の文化結合症候群とま
で言えるものをも含んでいる.しかしながらそれは,いわば現代日本の時代精神を反映している.
    (中略)
並行して生じたことは,パーソナリティ発達における未熟さと社会性の希薄さである.本来的には自らの人生の試練と見なすべきこと
を,外在化することで,不適応状態をもたらし,結果としてうつ状態に陥る.そして,その改善を医療に求めて受診するのである(これ自体
悪いことではない)が,時としてすでに述べたような問題をはらんだ操作的診断基準によってうつ状態が安易に「うつ 病」と診断され
てしまうリスクが存在する.この場合, 自らの人生の課題が「医療化」されて,さらに抗うつ薬 投与により「医原性うつ病」が生み出さ
れる危険性が生じる.ここで必要なことは,むしろ薬物療法という身体療法ではなくて,精神療法的アプローチによる本人の内省的自覚
と葛藤処理能力の向上,そして人間的成長への援助であろう(もちろん,補助的に抗不安薬などを使用 することを否定するものではない
が,一義的に抗うつ薬の適用がなされるべきではない).

ttps://www.jstage.jst.go.jp/article/josh/7/1/7_13/_pdf
臨床現場における「新型うつ病」について/生田 孝
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擬態うつ病に、本物のうつ病と同じ治療をしても効果はあまり期待できない。それではどうしたらいいのか。それには医学的・非医
学的という垣根を取り払い、治療というものをトータルに考えてみる必要がある。(中略)擬態うつ病の症状をよくする第一歩は、
医者から離れることではないかと考えている。
林公一/擬態うつ病
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昭和大学附属烏山病院病院長 加藤進昌
「私の診察での実感としては、半数は人格障害」(ささっとわかるアスペルガー症候群との接し方:加藤進昌)講演にて
「アスペルガーじゃないみたいですというと、ヤブ医者扱いされてしまう」
「外来で感じるのは、「自分が会社でうまくいかないのは自分のせいではない。発達障害のせいである」というふうに、自分でない何か
のせいだということを頼りに来られる方が結構いらっしゃいます。」