730つづき

 ハイデガーが本来性と云う場合、〈良心の呼び声〉といったりする。〈良心
の呼び声〉によって本当の自己に気づかされたり、または顔をそむける自分
を責めたりもするわけです。〈自分が本当に求めているのは…〉と気付かさ
れる。
 あれが実存思想でもありそれもリアルな実存思想でもあるのはそういう
内実を言い当てているからでもある。
 ハイデガーが政治的加担が有名だからあれが実存思想であることには
消去されたりするが、実は実存の在りか、それが本来的には何だということ
についてはよく言い当てている。

 その言い方を辿ってみると、「自己完結の孤立化での安らぎと希望 」
「自己閉鎖と庇護性と孤立化自己完結人生観」
というよりは、絶えず自己に於いて震動し、〈向こう側からやってくる〉
何か-それも自己だが-に対峙することが視線に入れられていることが分かる。
そのように自己を問われている。まったく「自己完結」などしないわけです。
ハイデガーが表す実存ていうのはそういうものです。