ちなみに、ケインズはそのエッセイの中で週休5日制の社会が訪れたら、
ノイローゼが流行るだろうと否定的な見解を述べている。

おそらくケインズは、週休5日制の社会が来ることを彼自身は期待していなかった。
知られているとおり、ケインズは穴を掘っては埋め掘っては埋める仕事でも
創ったほうが社会のためになると主張した経済学者だ。
そんな経済学者が労働時間の短縮を唱えるはずがない!

1930年といえば大恐慌の時代だ。ソ連はまだ急成長していて、
資本主義が倒れるかもしれないと欧米の人びとの間でささやかれていた時代。
ケインズは資本主義をイデオロギー的にもなんとか擁護する必要があった。
彼が意識していたのは明らかにカール・マルクスだ。
カール・マルクスが資本論で労働時間の短縮を訴えていることを彼が知らないはずがない。

そこでケインズは言ったのだ。資本主義のままでもカール・マルクスが掲げた目標は
今世紀末には達成される見込みがあると。目的のために資本主義を放棄する理由はないとね。